最終年度である本年度は、社会福祉従事者論の検討と福祉実践の概念に関する検討を重点的に進めた。 1,社会福祉従事者論の検討は、1920年代から1930年代に見られた社会事業の「職業化」に関する論考や1930年代から1940年代に見られた「社会事業精神」に関する論考を分析、また、1945年から1950年代前半を対象に『社会事業』『福祉春秋』『社会事業研究』『大阪社会福祉研究』などの雑誌論文を中心に福祉実践の倫理性に関する論考を分析した。 2,福祉実践の概念に関する検討は、前年度までの研究実績をふまえて、主に実践の運動性に着目した考察を進めた。なお、福祉実践と価値の関連性に関する考察は、社会事業史学会第6次歴史教育委員会報告(第6章「福祉の価値という視点から考える歴史教育」)に反映された。 研究期間全体を通じて、福祉実践に関連する人物史の検討、明治期の慈善事業論の検討、大正期から昭和戦前期の従事者論の検討、占領期から1960年代までの従事者論の検討、1960年代から1970年代までの福祉労働論の検討など歴史研究に加えて、共同性に関する理論的な検討、福祉実践の概念に関する検討、福祉実践史の方法に関する検討などを行った。 研究の成果は、学会報告(日本地域福祉学会「沖縄群島社会福祉協議会(1951-1958)の組織化活動に関する考察」など)や論文(日本社会福祉学会「「慈善事業」概念に関する考察」など)で随時発表した。福祉実践論の進展に向けた基礎的な研究として意義を果たし、また歴史研究として慈善事業論や福祉実践史研究の展開に学術的に寄与した。
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