研究課題/領域番号 |
24530776
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研究機関 | 静岡県立大学短期大学部 |
研究代表者 |
鈴木 俊文 静岡県立大学短期大学部, その他部局等, 講師 (60566066)
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研究分担者 |
立花 明彦 静岡県立大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (20342082)
濱口 晋 静岡県立大学短期大学部, その他部局等, 講師 (90342302)
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キーワード | 災害介護 / 災害過程 / 介護職員 / 災害研修 |
研究概要 |
本研究は、自然災害で被災した高齢者・障害者等の介護施設に従事した職員の業務・支援の実態を分析し、被災した介護施設の生活支援(介護)に必要となる知識や技術・行動力を習得するための教材・研修プログラムの開発・作成を目的としている。具体的には①発災から平常時に至るまでの被害状況と、提供された介護の内容や職員体制、被災時における家族や地域との関わりや役割の明確化、②これらの実態に基づく事例教材の作成、③介護福祉専門職者を対象にした研修への導入を目指す。当該年度は、②に着手し、昨年度行なった新潟県下4被災施設(高齢者・身体障害者入所施設)の災害エスノグラフィーの再分析の結果を基に、介護施設の災害過程を題材にした研修教材及び災害過程アセスメントツールを開発した。具体的には、過去7年間に発生した災害の中から地震に焦点を当て、①「知る」②「学ぶ」③「備える」の3章構成で下記のとおり整理した。 ①「知る」では、近年の災害と要援護者の実態を知ることをねらいに、②「学ぶ」では、被災時に施設が巻き込まれる変化とは何かについて、被災事例を集積した災害エスノグラフィーを掲載。③「備える」では、個別の「災害過程」をケースメソッドに、被害状況の想定と、そこから導きだされる課題をアセスメントすることをねらいとして開発したツール「災害アセスメント」を掲載した。 今後は、本書を用いた研修をモデル化し、各々の施設の機能と備えるべき介護内容を明らかにすること(アセスメント)をねらいとして作業を行なう。次年度はモデル研修及び研修効果をはかるための評価視点の検討を加え、研修の導入を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、自然災害で被災した高齢者・障害者等の介護施設に従事した職員の業務・支援の実態を分析し、被災した介護施設の生活支援(介護)に必要となる知識や技術・行動力を習得するための教材・研修プログラムの開発・作成を目的としている。現在までの達成度は以下のとおりである。初年度は、新潟県中越地震・中越沖地震で被災した入所型介護施設の災害過程を明らかにすべく、発災から平常時に至るまでの被害状況と、提供された介護内容や職員体制、被災時における家族や地域との関わりや役割を再分析し、災害エスノグラフィーの作成を進めた。2年目となる当該年度は、作成した災害エスノグラフィーに基づく教材の開発を行ない、プレ研修として介護老人福祉施設で教材活用を試験的に実施した。開発した研修教材は、プレ研修の結果をふまえ「施設の災害過程を疑似体験できる」ことを主軸に「災害過程」という概念を用いて、以下の3点に力点をおいて編集した。 1)介護内容に直結するライフラインの被害状況と、それによって生じる介護内容の影響を疑似体験できるケースメソッドを複数用意、これにより、被災事例を基に自施設で同程度の被害を受けた場合のアセスメントを可能にした。 2)上記の結果を基に自施設に必要な災害対策、災害研修の検討ができるアセスメントシートを考案。これを活用し、個別性の高い現実に即した災害対策を導くことが期待できる。 3)自施設に必要な災害対策を考えるための参考となる災害対応者の証言を掲載。具体的にはライフラインの主な代替品や介護内容の変化に焦点をあてた災害対応者の語り(エピソード)をコラムと合わせ複数掲載した。また、巻末には「災害ボランティア」「災害過程アセスメントシート及びその活用例」の紹介も加える構成とした。 今後は、これらの教材を用いた研修内容の検討を行ない、研修プログラムの開発及びモデル研修への導入を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、①発災から平常時に至るまでの被害状況と、提供された介護内容や職員体制、被災時における家族や地域との関わりや役割を明らかにし、②これらの主要な変化(実態)に基づく災害エスノグラフィーの作成と、③介護福祉専門職者を対象にした研修への導入を目指すものである。当該年度に開発した研修教材は、介護施設の被災経験をひとつの「災害過程」として捉え、ライフラインの損害がもたらす介護内容の変化等を時間軸との関連で整理したものである。ケース教材である最大の利点は、個別の被災事例を材料にすることによって、被害状況と災害過程に生じる主要な変化を仮定し、これらの主要な変化に備えるべく「物品、業務、災害研修のあり方」等を自施設の実情に応じたかたちでアセスメント出来、対策を導きだせる点である。今後、この教材を活用した研修モデルを開発、運用していくためには、以下の2点を柱に研究を進めることが重要であると考えている。 1)被災状況を疑似体験する(できる)ための事例報告は、研修開催地域の特性 をふまえて選定することが重要である。そのため、被害規模の想定を目的にするだけでなく、地域レベルの介護ニーズの推計や地域の保健医療等をふまえたサービス量との関連性の検討を進めていく必要がある。 2)個別事例から災害マニュアルの適応可能性・見直しが可能となるアセスメント演習の具体的な進め方を示す。アセスメントは、施設各々の自助活動を基盤に据えた対策が見出しやすい一方で、一定の災害過程に生じる公助、共助の視点をふまえた対策が見出しにくい課題もある。これを改善するために、上記1)で示した研修開催地域の特性について、情報共有を前提にした演習導入のあり方、補足資料の作成を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度は、平成26年度に活用する研修教材の編集、印刷に係る費用として計画・執行した。しかしながら、当初計画していたよりも研修教材の総頁数が縮小したため、その分に関わる印刷費用が残額分発生した。 平成26年度に計画している研修モデルの試行に関わる旅費及び、本研修プログラムの効果測定に関わるアンケート集計(データ入力)費用の使用等で計画している。
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