本研究計画は、社会的弱者のための情報保障運動が様々に展開しているスカンディナヴィア3国の情報保障政策について、現地の組織(公的機関・NPO)や制度などを直接調査することによって実証的に明らかにし、その歴史的・思想的背景、そこに見られる問題点を障害学、社会学、言語政策学、社会言語学の視点から多角的に析出すること、さらにそこから日本における情報保障政策の可能性を検討することを目的として立案された。3年間にわたって実施した現地調査では、関連資料の収集とインタビュー調査をおこなったが、その際、本研究課題に関する先行研究がほとんどないことが確認された。またそこでは、事前の予想とことなって、情報保障のシステムが当事者を主体とした障害者運動とは一線を画したものであることが明らかになり、逆に日本における情報保障の試みの先進性が確認されることとなった。スカンディナヴィアを事例とした情報保障システムの検討の過程では、情報保障を権利保障(言語権、コミュニケーション権、情報アクセス権)の中に理論的に位置づける重要性もあきらかになった。
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