研究課題/領域番号 |
24530779
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
島田 千穂 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (30383110)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 終末期ケア / 看取り介護 / 施設ケア / 質の向上 |
研究概要 |
研究協力施設を対象に「反照的習熟プログラム」の試験的導入と、実践に伴う影響の確認を行った。「反照的習熟プログラム」とは専門職が専門性を高め熟練していく過程を理論化したReflectionを参考に、出来事を記述、描写し、そこで生じた自分の感情や評価、他の選択肢はあったか、次にどうすべきかを考えるという一連のプロセスを促進することによって、実践知の生成と組織としての蓄積を意図したプログラムである。 プログラムは、看取り(最終的に病院での死亡になった事例も含む)が終了した事例について、「内省」(全職員による看取りケア確認シートの記入)と「反照」(検討会の開催)を繰り返すものである。研究者は「反照」の準備として看取りケア確認シートを集計し、「分析表」として施設に返却する役割を担う。検討会終了後、参加者(施設職員)は、検討会を「表現促進」「内省促進」「批判的反照」の3側面から評価する。 11施設が導入中であるが、積極的に取り組んだ一施設の状況を報告する。当該施設では、平成23年11月にプログラムを開始し、平成24年10月までの1年間で、「看取りケア自己評価(5段階評価)」の平均値が上昇傾向を示し、看取りを肯定的にとらえる方向に変化している可能性が考えられた。また、検討会について「表現促進」は上昇傾向にある一方、「内省促進」と「批判的反照」には変化の傾向はなかった。この間、施設死亡事例は、プログラム開始時期はゼロであったのに対し、中期に1事例、後期に4事例(全15事例)となった。 以上のことから、反照的習熟プログラムは、実践内容の言語化を促進し、経験の意味を強化して、看取りケア提供の肯定感を高める可能性がある。看取りの肯定的自己評価の強化によって、個人の経験が次の実践につながり、個人の知識として蓄積されるプロセスが生じるのかどうかを確認することが、今後の課題として残されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、施設に反照的習熟プログラムを導入し、その影響を確認することと計画しており、計画通りに進行している。また、反照的習熟プログラムを導入した施設と、しなかった施設に対して、「安全なケア提供環境尺度」による調査を実施し、ベースライン調査が終了した。 また、第19回国際緩和ケア学会に参加し、情報収集とこれまでの研究成果の報告を行った。終末期ケアにおいて、介護職が看取りの経験を振り返り、整理するプロセスを重視した視点からの研究報告が複数あり、その重要性が確認できた。 一方、反照的習熟プログラムが継続可能な施設と、導入したものの中断する施設があることから、汎用性の高い実践可能なプログラムにするためには改善が必要とされている。来年度は、介護職員を対象としたインタビューによるプログラムの影響評価に加え、プログラムの修正点の探索も計画に追加する必要がある。具体的には、施設での検討会を進行する介護職リーダーを対象とし、看取りにおける振り返りの重要性の認識、施設ケアにおける看取りの意味づけ、振り返りによるケアの変化の有無について、グループインタビューによって確認する。
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今後の研究の推進方策 |
反照的習熟プログラムを導入した研究協力施設の介護職員を対象として、面接調査を実施する。看取りケアにおいて、実践を経験として整理することによって次の実践につながるかを確認するため、経験と実践の循環のプロセスを明らかにする目的でインタビューを行い、その中で振り返りが及ぼす影響を評価する。協力施設に研究者が訪問し、介護職経験3年前後の職員を研究協力者とする(3名×10か所)。調査内容は、自らが関わった看取り事例についての経験、印象に残った事例、施設で看取りケアを提供することについての考え方である。インタビュー内容を逐語録に起こし、研究協力者個々の経験を重視する立場から解釈学的現象学的に分析を行う。 さらに組織文化の変化をアウトカムとして評価するため、反照的習熟プログラム導入施設と対照群の施設の職員を対象に、平成25年10~11月に「安全なケア提供環境尺度」の介入後のデータ収集を実施する。 得られた成果は、国内外の学会(国際老年学会、日本社会福祉学会、日本看護科学学会)で報告し、さらに次年度の計画のための情報収集を行う。 追加として、反照的習熟プログラムの汎用性を向上させる方策を検討する。協力施設の介護職リーダーを招聘し、議論を促して相互作用によって意見を収集しやすくするグループディスカッションを用いてデータを収集し、分析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費:書籍、文具、協力施設謝品 国内旅費:職員のインタビュー調査のための施設(10か所)への往復旅費・宿泊費、学会参加旅費、介護職リーダーの招聘のための旅費・宿泊費 外国旅費:国際学会参加旅費 人件費・謝金:データ入力および整理のための雇用、インタビュー謝礼、グループインタビュー参加謝金 その他:学会参加費(3回)、郵送費(施設からのプログラム実施に伴うデータ送付、施設への資料送付、調査票送付・返送)、印刷費(調査票)
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