研究課題/領域番号 |
24530779
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
島田 千穂 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (30383110)
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キーワード | 看取りケア / 経験学習 / リフレクション / 高齢者の終末期 / 特別養護老人ホーム |
研究概要 |
人生の最期に関わるケアは、関わる人々の多様な価値観から決定された方針に基づいて提供されるため、質の評価が難しく、技術の蓄積も容易ではない。そこで、看取りケア経験を振り返り次の実践に生かす「反照的習熟プログラム」を開発した。本研究は、プログラムの「協働的内省」への参加者の看取り概念への影響を明らかにすることを目的とした。 反照的習熟プログラムは、個人内内省(看取りケア確認シートの記入)と協働的内省(検討会)の2部からなる。個人内内省は、作成したシートに則って進め、協働的内省は、多職種が集まって経験を話し合う場を設定することとした。研究者は、協働的内省のテーマ設定や進行をサポートした。施設職員の参加者は、協働的内省終了後、気付きを自由に記述した。この記述について、経験学習サイクルの視点から内容分析を行った。 具体的経験を言語化し、他者の経験と照合させることによって、経験できなかった出来事を知り(経験の補完)、自らの見方・考え方の特徴に改めて気づき、実施したケア内容の評価について相互に点検する機会になっていた(内省の深化)。さらに、看取った利用者の振り返りが、現在の入居者のケアの改善を動機づけ(他利用者への適用)、看取りとは何か客観的な視点を獲得することにつながっていた(看取りケアの客観的視点の獲得)。それらから組織的な取り組み課題を浮上させていた(組織的実践課題の浮上)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の計画は、反照的習熟プログラム(個人内内省と多職種間の協働的内省)が個人と組織に与える影響評価を実施し、26年度の施設間反照への準備を行う計画としていたが、個人への影響については計画通り順調に進んでいる。 影響評価については、研究方法上の変更(量的分析から質的分析へ)があったが、その変更は、研究目的により適合した方法が選択できたという点で、前向きな変更である。その結果、反照的習熟プログラムの参加者への影響は、経験学習サイクルの概念による説明可能性と、適応的熟達化(状況に応じた臨機応変の対応ができるようになること;Hatano & Inagaki 1992)の方向性の促進が示唆された。看取りケア経験が、反照的習熟プログラムを通じて、個人の経験知として蓄積できる可能性までは示唆されたが、今後、組織の知への変換を意図したプログラムとして活用しうるかについて検討する課題が残されている。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り、多施設職員による「反照的習熟プログラム」を実施する。施設内における反照的習熟プログラムの影響について、経験学習の視点から確認することができ、今後の課題は、個人の経験知を組織の知への変換を促進するプログラムの検討である。そこで、施設外の多職種グループによる看取りケア経験の協働的内省の場を設定し、実施することとする。 一都六県の特別養護老人ホーム全数に、看取りケア実績を調査し、実績のある施設の介護職と看護職に対し、協働的内省への参加を募集する。組織への知の変換を目的とするため、一施設から複数名の参加を基本とする。協働的内省は、職種、職位、年齢、性別、経験年数等属性が偏らないよう多様な構成メンバーからなるグループ討論を行う。グループ内で事例報告を行い、経験の照合を行う。グループ討論後、同施設職員間での検討時間も提供し、自施設のSWOT分析を行い、強みと改善点を整理する。 プログラムの成果を評価するため、プログラム参加者の経験学習行動の程度について、前後の変化を比較する。 25年度の成果から、施設内反照的習熟プログラムにおける協働的内省の場は、協働の場の雰囲気、すなわち経験の積極的表現とその共有を通じて、共に組織における課題を浮上させる意図を持ったグループとして成立する場合と、成立しない場合がある可能性が示された。今後、汎用性の高いプログラムとして整備するためには、協働的内省の場の背景にある要因について分析する必要がある。グループ討論の内容を逐語録にし、質的手法による分析を行い、反照的習熟プログラムの核となる「協働的内省」がどのようなプロセスで進行するのか、協働が促進される場の特徴を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年度に多施設職員間の反照的習熟プログラムを実施する際、プログラム中に生じる場のダイナミズムと討論のプロセス分析を計画に追加した。そのため、グループ討論の記録とテープ起こしのための費用が必要となったため。 委託費(出張録音とテープ起こし)16グループ分・1グループあたり4時間
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