研究課題/領域番号 |
24530789
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研究機関 | 群馬医療福祉大学 |
研究代表者 |
大野 俊和 群馬医療福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (70337088)
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キーワード | 社会系心理学 / 社会福祉関係 / 少子化 / しろうと理論 / 高齢化 |
研究概要 |
本年度は、前年度の文献レビューを受けて、2つの研究を実施した。ひとつの研究は一連の質問紙調査の結果を「ノスタルジーバイアス」という認知的バイアスとして解釈する試みである。パイロット調査の結果、人々は一貫して、核家族化、少子化、高齢化に関する項目で極端に誤った回答をしていた。つまり、人々は、核家族化や少子化、高齢化の現状に対して極端に悪い方向に回答していた。そこで、この点をより詳細に検討するため、あらたに調査対象者を増やしてパイロット研究と同様の質問紙調査を実施したところ、パイロット調査と同様に、これら3つのしろうと理論に対応する項目で相互に正の相関がみられた。このことは、3つのしろうと理論がそれぞれ存在しているのではなく、ひとつの「ノスタルジーバイアス」が存在していることを示唆している。 もうひとつの研究は、半構造化された聞き取り調査を実施し、上述したしろうと理論がどのような知識を用いて構成されているかについて定性的に検討する試みである。具体的には、最初に調査対象者に、パイロット調査とほぼ同様の質問紙に回答してもらった後に、聞き取りを開始し、なぜそう回答したのかの理由を尋ね、また、その理由に対してもなぜそう思ったのかを問う形で実施した。予備的に8名の調査対象者に聞き取り調査を実施したが、現在、その内容をいくつかの軸をもとに探索的にカテゴリー化している段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は2つの研究を実施した。質問紙調査の実施と分析については一通りの達成を得たものの、聞き取り調査の実施および分析については、調査対象者8名に対する予備調査の段階で終わり、予定していた50名程度の調査対象者に対する調査分析が実施できなかった。これは、予備調査で得られたインタビュー内容のカテゴリー化が難航したためであり、今後、カテゴリー化にあたっての良策を練り、次年度に引き続いて実施することにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として、実施が遅れている、半構造化された聞き取り調査を実施し、しろうと理論がどのような知識を用いて構成されているかについて定性的に検討する予定である。上述したとおり、質問紙調査の結果、人々は一貫して、核家族化、少子化、高齢化に関する項目で極端に誤った回答をしていた。しかしながら、この結果は、3つのしろうと理論がそれぞれ存在するというよりは、「昔は良かった」ないしは「世の中はどんどん悪くなっている」といった「ノスタルジーバイアス」が介在していると解釈できる。そこで、今後、聞き取り調査においては、これまでの社会福祉に関連したトピックだけではなく、我が国の犯罪率や離婚率といった社会問題についても調査対象者に尋ね、そこでの回答内容を吟味していくことにしたい。 また、次年度は、インターネットを利用した、質問紙調査も実施する予定である。ここでは、これまでの調査で得られた結果が、質問項目での尋ね方を変えた場合にも頑健に確認できるかを定量的に検討する予定である。そこでは、世の中の多くの出来事は昔より悪くなっているという、社会一般に対する誤った信念についての考察を深め、社会福祉に関連したトピックだけでなく、犯罪率や離婚率といった社会現象に関するトピックについても尋ねることになる。また、回答にあたっては、調査対象者の自信度や各トピックについての既有知識の有無等も求め、より深い理解が得られるようにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度実施予定であった調査対象者50名の聞き取り調査が予備調査の段階で終わってしまったため、その調査費用として次年次使用が生じている。これは、予備調査で得られたインタビュー内容のカテゴリー化が難航したためであり、今後、カテゴリー化にあたっての良策を練り、次年度に引き続いて実施することにしたい。 今後、実施が遅れている、半構造化された聞き取り調査を実施し、しろうと理論がどのような知識を用いて構成されているかについて定性的に検討する予定である。質問紙調査の結果、人々は一貫して、核家族化、少子化、高齢化に関する項目で極端に誤った回答をしていた。しかしながら、この結果は、上述した「ノスタルジーバイアス」の介在を意味しており、今後、聞き取り調査においては、これまでの社会福祉に関連したトピックだけではなく、他の社会問題のトピックについても調査対象者に尋ね、そこでの回答内容の分析を行っていくことにしたい。 また、次年度は、インターネットを利用した質問紙調査を実施する。ここでは、これまでの調査で得られた結果が、質問項目での尋ね方を変えた場合にも頑健に確認できるかについて定量的検討がなされることになる。
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