本年度は、前年度までの調査結果を受けて3つの調査を実施した。 1)大学生を調査対象者とした質問紙調査では、パイロット調査の結果とほぼ同様に、2つの事柄で頑強に少子高齢化社会に関するしろうと理論が確認された。すなわち、1.核家族化=近年の産物という形での誤解、2.少子化=近年の産物という形での誤解、3.老後の暮らしに関する誤解である。たとえば、人々は、1.核家族化が近年になって右上がりに増加していると誤解していた。また、2.少子化においても、実際よりも一人っ子家族の割合を実際よりも高く見積もっており、それが近年になって増加していると誤解していた。そして、3.現在の日本での高齢者の老人ホームの入所率を実際よりも過度に高いものと誤解していた。これらの3つの項目での相互相関もきわめて高かった。 2)一般サンプルを対象とした、インターネットによる質問紙調査においても、1の調査結果とほぼ同様に、3つの事柄で頑強に少子高齢化社会に関するしろうと理論が確認された。 3)日常的に、福祉に関わる人々に対して実施した聞き取り調査でも、多くの人が、実際にはさほどの変化が見られないのにもかかわらず、1.核家族化が近年になって右上がりに増加していると誤解していた。また、2.少子化においても、実際よりも一人っ子家族の割合を実際よりも高く見積もっており、それが近年になって増加していると誤解していた。そして、3.現在の老人ホームの入所率を実際より高く見積もっていた。これらの結果は、一貫して実際よりも悪い方向で誤解をしている点で一致していた。また、その原因として何が考えられるかを尋ね、そこでの回答をカテゴリー化したところ、人々は、家族、地域、社会の崩壊や社会構造・情勢の変化とカテゴリーに分類される具体的な事柄を挙げやすいこと、そして、その崩壊や変化が10年程度で生じ、ますます悪化していくと考えやすいことが示された。
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