研究課題/領域番号 |
24530792
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 昭和女子大学 |
研究代表者 |
藤島 喜嗣 昭和女子大学, 生活機構研究科, 准教授 (80349125)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 解釈レベル / 心的距離 / 接近可能性 / 利用可能性 / 自己知識 / カテゴリー知識 / イグザンブラ |
研究概要 |
平成24年度は、抽象思考-具体思考時における抽象的、具体的知識の接近可能性測定(研究1)、および心的距離の異なる事象の将来予測における自己知識の接近可能性測定(研究2, 研究3)を実施した。また、日本国内で開催された3つの学会に参加し、解釈レベル理論関連の研究動向調査を行った。以下、3つの研究を説明する。 研究1は、認知・判断の抽象度とそれに利用される知識の抽象度が対応することを確認することを目的に、大学生200名に対して実施した。まず、複数の社会的事象に対し上位もしくは下位カテゴリーを回答させることで思考の抽象、具体を実験的に操作した。次に、自己定義的エピソードを記述させた。その後、行動同定フォーム(BIF)を実施した。既にデータ入力を終了し、統計解析中である。 研究2は、心的距離の異なる事象の将来予測を行うことによって自己知識の接近可能性が異なるかを確認することを目的とした。女子大学生40名を対象に実験室実験を行った。自己知識の接近可能性測定のため自己プライムを含めた語彙判断課題を実施した。次に、時間的距離の操作を含む、将来予測場面想定課題を行った。その後、再び語彙判断課題を実施した。分析の結果、近接条件では否定語よりも肯定語で活性化の効果がみられたが、遠方条件ではこのような差は見られなかった。心的距離が広がると解釈レベルが抽象的になり、階層上位の抽象的概念を用いやすくなるためだと考えられた。この知見を平成25年度に学会発表することとした。 研究3は、研究2と同じ目的を別の実験方法で検討したものである。女子大学生64名が2名1組で実験に参加した。行為者による外見の評価推測と観察者による実際の評価との関連が、時間的距離の実験操作によって異なるか検討した。既にデータ入力を終了し、統計解析中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度研究実施計画のうち、予定していた2研究は、一部改変があったものの、ほぼ順調に実施することができた。研究の改変部分は2点で、研究1において反応時間を利用した測定を予定していたが自己報告型の測定に切り替えたことと、研究2において具体的知識の測定も併せて行う予定であったが抽象的知識の測定に限定したことであった。これらは、軽微な変更で、研究を進めるにあたってより確実で有益な知見が得られると判断した結果である。予定した2研究に加えて、研究2のフォローアップ研究として研究3を実施することができたことは、非常に好ましいことと考えられる。これにより、研究目的に関するデータをより詳細に集めることができた。しかし、3研究のうち、全ての分析が終了したのは1研究にとどまっており、この点は平成25年度に速やかな対応が必要である。 平成24年度研究実施計画では、国内外の学会に参加するとあり、国外の学会にも参加することを予定していた。しかし、所属機関での役職スケジュールの関係で参加することはできなかった。その代わりに、国内学会3つに参加し、情報収集ができた。 以上のことから、およそ順調に研究を進展させることができたと判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は研究実施計画通り、おおむね順調に進展させることができたことから、平成25年度においても基本的には同様に進めていきたい。具体的には、年度内に2~3の実験室実験を計画し、実行することである。平成24年度と同様に、実験参加者プールを平成25年度最初に構築し、円滑に実験ができるようにつとめたい。ただし、平成24年度に実施した実験においては分析が完了しないという不手際があった。これについては、実験実施前に分析計画を確定し、迅速に対応できるように研究スケジュールを変更する。また、データ入力等を依頼する研究補助者を早めに確保し、円滑な入力、分析作業ができるように配慮する。 平成24年度に実施した研究に関して、平成25年度の早い段階で成果をまとめ、国内外の学会で発表する。所属機関での役職の関係から国外学会への参加が困難な場合には、国内の関連学会で代替するようにする。また、研究成果を早期に学術論文の形にまとめる。併せて、専門家のみならず、一般人も成果をみることができるようにインターネットを通じて成果公開できるようサイト構築を試みる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度には次年度使用額(B-A)として152,597円が発生した。これは、当初予定していた国外学会への参加ができなかったことによって、旅費支出が抑制されたことによるものである。平成25年度においては既に国外学会への旅費を計上していることから、この次年度使用額については、物品費ならびに人件費・謝金に充当することとしたい。 物品費における具体的使途としては、テキストマイニングを可能とするデータ解析用ソフトと潜在連合テストを可能とする実験刺激呈示用PCソフトの購入を考えている。前者については、研究では多くの自由記述データが得られるのだが、これに関する解析の手段を準備できていなかった。テキストマイニングソフトの購入により、これが可能になる。後者については、概念活性化測定において現在用いているソフトでは上手く呈示できない測定手法を可能にするものである。人件費・謝金は、データ入力のための研究補助者への謝金であり、迅速かつ円滑なデータ分析ができるよう、人員配置を強化することに用いたい。
|