研究課題/領域番号 |
24530792
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研究機関 | 昭和女子大学 |
研究代表者 |
藤島 喜嗣 昭和女子大学, 生活機構研究科, 准教授 (80349125)
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キーワード | 解釈レベル / 心的距離 / 接近可能性 / 利用可能性 / 自己知識 / プロトタイプ / イグザンプラ / ステレオタイプ |
研究概要 |
平成25年度は、当初計画に基づき研究4, 5を実施、さらに前年度知見を深めるため研究6を実施した。また、日本国内の学会2つに参加し、平成24年度実施の2研究(研究2、3)を発表した。さらに、研究成果公開のためのサイト構築に着手した。以下、研究4~6を説明する。 研究4は、解釈レベルの相違によってステレオタイプ集団の典型例および具体例への接近可能性が異なるかを検討した。女子大学生66名に対し、カテゴリーもしくは具体例を想起させる解釈レベル操作を行った後、否定的ステレオタイプ集団に関わる潜在連合テスト(IAT)と、当該集団における肯定事例に関する潜在連合IATを実施した。分析の結果、肯定事例IAT の結果は、具体条件よりも抽象条件で肯定的となった。また、典型例IAT と肯定事例IAT の得点は弱く正相関したが、解釈レベルによって効果量は異ならなかった。 研究5は、誠実性概念の活性化が試験勉強に関する将来予測に影響するか、その効果が誠実性概念と自己との連合と時間的距離によって調整されるかを検討した。大学生218名が実験に参加し、誠実性概念の活性化の後、時間的距離が異なる将来予測を行った。また、自己と誠実性概念の連合を測定するためIATを実施した。その結果、先行研究に反し、誠実性概念の活性化の影響は見られなかった。また、誠実性概念と自己との連合強度ならびに時間的距離による調整効果も見られなかった。 研究6は、解釈レベルの異なる事象の将来予測を行うことによって自己知識の接近可能性が異なるかを確認した。女子大学生40名が2名1組で実験に参加し、行為者の夜外見の評価推測と観察者による実際の評価との関連が、解釈レベル操作により異なるかを検討した。その結果、解釈レベルが抽象的な場合に評価推測は正確になり、自己知識接近可能性の変化が関与する可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度実施計画で予定した研究4, 5は、一部改変を行ったが無事に実施することができた。改変は、研究4において将来予測場面を用いるところ、より直接的な潜在連合テストにしたことである。これは軽微な変更であり、研究目的に対しより直接的な検証ができると判断してのことである。また、前年度の研究3を保管する研究6を実施することができた。また、これらの研究の分析は既に終了しており、順調に研究を進めることができた。 昨年度の研究について2研究を国内学会で発表できた。しかし、当初は国外の学会への参加を予定していたが、所属機関の職務の関係で参加することはできなかった。さらに、昨年度研究のうち1つは未発表のままである。この点は善処すべきであると考える。 研究成果を公表するためのサイトも構築することができたが、学会誌投稿の関係もあり、研究知見をサイトで公開できるまでには至っていない。この点も善処すべき点である。 以上のことから、当初計画以上とは言えないが、およそ順調に研究を進めることができたと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度、25年度共に研究実施計画通り、概ね順調に進展させることができた。これを受けて、平成26年度に於いても当初の実施計画通りに研究を進めていきたい。具体的には、心的距離の異なる自己制御場面における特性関連語、行動関連語の接近可能性測定(実施計画上では研究5に相当)、内集団同一視の程度を利用した自己知識利用可能性の影響研究(実施計画上では研究6に相当)の2研究を実施する。年度当初に実験参加者プールを構築し、円滑に実験実施できるようにつとめたい。 平成24年度未発表データ、平成25年実施研究については、平成26年度における国内外の学会で発表することとしたい。所属機関の職務上の関係で国外学会への参加が困難な場合には国内の関連学会での発表に変更することとしたい。また、研究成果を早期に学術論文の形にまとめ、サイト等で研究成果を公開できるようにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた国外学会への参加が所属機関の職務の関係で実現しなかったことによる。 次年度使用額については、物品費ならびに人件費・謝金に充当することとしたい。物品費における具体的使途としては、刺激呈示用PCソフト(SuperLab4.5)のアップグレードと潜在連合テストを可能とする実験刺激呈示用PCソフト(inquisit)の追加購入の費用としたい。前者は現在バージョンが5.0となっており、動作安定による測定精度の向上が期待されるために実施したい。後者に関しては、平成25年度にも購入したが、実験実施の上でソフトの数が少なく支障をきたすことがあったので、追加購入としたい。人件費・謝金は、実験実施、データ入力のための研究補助者への謝金である。円滑な実験実施と迅速なデータ解析ができるよう、人員配置を強化したい。
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