1 マインド・コントロール影響の被害実態の把握のための個別面接調査を破壊的カルトの脱会者ないし現役信者に対しておこなった。調査の結果、①被害実態については、いずれも現在の各自の生活に大きく影響を与えていた。しかも、修復不可能な結果を招き、多額の財産を奪われたり、身体的ならびに心理的苦痛を与えられたりした。また対象者の中には加害者として加担させられており、いまだに自己責任を引き受けられないでいる者もいた。②最初の接近は、不安な心理を煽られ、そのような状態になった対象者に対して、巧みな情報操作で超越した存在だと信じ込まされて崇拝し、その権威者への依存を誘導された点は共通していた。③権威者して崇拝した存在から発せられた言葉をもとに世界観や因果観が構築され、いかなる指示も正当化され、それに従うことで報酬が得られ逆らえば罰せられるようになった。また他の信者たちの行動を同一化するべき模範とした。④現時点では多くの対象者が相手の欺瞞に気づいているが、いまだ信じていて加害行為さえも正当化する対象者もいた。なお、対象者らにはカルト被害やマインド・コントロールの知識はほぼなかったことが再確認された。 2 マインド・コントロール影響に対する脆弱性・防衛スキル尺度の検討するために、質問紙調査を2つ実施した。その結果、①被害実態は、はじめての被害が半数を超えるぐらいであり、何度も被害に遭っている人々もいた。②被害後の心理は、無力感、現実逃避、積極的対処、羞恥に分類された。③被害者にはコミットメント、返報性、専門性、執拗性、不審性の無さの4因子が、他の承諾誘導の原理とが複合的に操作されていた。④自己呈示性、同調傾向性、自己信頼性、慎重性において、被害者は非被害者と比較して有意差が認められ、これらの心理特性が詐欺被害と大きくかかわっていることが明らかとなった。
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