研究課題/領域番号 |
24530798
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鎌倉女子大学 |
研究代表者 |
廣田 昭久 鎌倉女子大学, 児童学部, 教授 (40266060)
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研究分担者 |
小川 時洋 科学警察研究所, 法科学第四部, 主任研究官 (60392263)
松田 いづみ 科学警察研究所, 法科学第四部, 研究員 (80356162)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 対人コミュニケーション / 顔 / 精神性発汗 / 皮膚電気活動 / 皮膚血流量 |
研究概要 |
従来、精神性の発汗活動は主に手掌・足底に生じると考えられてきたが、日常的な対人状況や感情生起場面では額等での発汗活動を経験することが多く、顔面部でも精神的な変化を反映した汗腺活動の生起を推測できる。また、この種の状況においては顔色の変化が観察されることが多く、これら顔の生理的変化が何らかの心理的状態を反映していることを想定できる。本研究では、顔面の汗腺活動及び皮膚血流変化の心理生理学的指標としての可能性について検討し、さらに各種感情喚起時のこれら反応が他者の存在によってどのように変容するかを調べ、顔面の汗腺活動及び皮膚血流変化が有した対人コミュニケーションにおける機能・意味について考察する。 平成24年度については、未だ詳細な検討が行われていない顔面の精神性発汗現象を中心に検討を行った。顔面については、探査電極を額、頬、鼻尖に、基準電極を耳朶に装着し、指尖については、探査電極を第二指末節腹側部に、基準電極を第一指爪上に置き、時定数10 秒、HFF 1 Hzにて増幅し、皮膚電位活動を同時に測定した。感情喚起映像及びスライド注視課題、歌唱課題、暗算課題を実施した。 その結果、いずれの顔面部位においても、指尖部と同様に明瞭な精神性発汗が生じていることが確認された。顔面各部において皮膚電位活動の反応変化パターンの特徴が見られた。額においては、一相性の増加、または低下後増加に転じるという二相性のパターンが見られた。頬においては、一相性の増加または低下のパターンが見られたが、個人によっては無変化の場合もあり、反応の有無と変化の方向性には個人差があることが示唆された。鼻尖においては、一相性の増加パターンが顕著に見られ、他の顔面部位に比べて最も顕著な変化として観察されるケースが多かった。一方、指尖部では多くのケースにおいて、反復する大きな増減が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
顔面部の汗腺活動が精神性発汗をしているかという、本研究の仮説の基本となる現象の確認が初年度の主目的であったが、計画していた課題を実施することで、その現象を明確に確認することができた。顔面部の精神性発汗を検討した先行研究がほとんどなかったため、その計測の方法(電極装着部位・装着方法、増幅方法等)から、探索的に試行錯誤的に検討する必要があり、観察可能な顔面の精神性発汗としての皮膚電位活動を捉えるのに少し時間を要した。そのため、当初予定していた課題の一部を実施することができなかった。また顔面皮膚血流変化等、他の生理反応を同時に記録することができたが、まだ詳細な分析までは進んでいない。得られた顔面の皮膚電位活動データのノイズ処理と効果的な定量化の方法を現在検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
顔面部皮膚電位活動のノイズ処理ならびに定量化については、デジタルフィルター処理、眼球運動・瞬目時の反応振幅を計測し、そのデータを顔面皮膚電位値から減算する方法、汗腺活動生起とみなし得る閾値を設定して、それ以上の活動についてのみ分析する方法等、いくつかの定量化・評価方法を検討する予定である。 観察者のいる条件といない条件とを設定して、各種感情喚起課題を実施し、対人コミュニケーション状況における顔面汗腺活動及び皮膚血流量変化の機能について検討する。 顔面皮膚電位活動と同時に計測している顔面皮膚血流量、心拍数、末梢皮膚血管緊張度等の各種生理指標について分析し、顔面汗腺活動及び顔面皮膚血管活動と他の生理指標との関係性について検討を行い、対人状況における顔面汗腺活動と皮膚血流変化が有するコミュニケーション上の機能・意味について考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に消耗品費、実験参加者謝金、旅費として使用する。設備備品費としての使用はない。消耗品として、実験で使用する電極、コード類、電池、関連資料・書籍等を購入する。実験参加の謝礼として図書カード等を購入する予定。また、学会参加・研究打ち合わせのための旅費として使用する予定である。
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