研究課題/領域番号 |
24530798
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研究機関 | 鎌倉女子大学 |
研究代表者 |
廣田 昭久 鎌倉女子大学, 児童学部, 教授 (40266060)
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研究分担者 |
小川 時洋 科学警察研究所, 法科学第四部, 室長 (60392263)
松田 いづみ 科学警察研究所, 法科学第四部, 主任研究官 (80356162)
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キーワード | 対人コミュニケーション / 顔 / 精神性発汗 / 皮膚電気活動 / 皮膚血流量 |
研究概要 |
従来から、精神性の発汗現象は手掌と足底に見られ、他の身体部位は温熱性発汗がその主因であるとされてきた。しかし、日常的な経験に照らし合わせると、様々な対人状況で生じる緊張や興奮、また羞恥や困惑等の精神的状態において、額や鼻部等での発汗を自覚することが多く、顔面部での精神性発汗の生起を推測することができる。また、この種の状況においては顔面の汗腺活動ばかりでなく、顔色の変化が観察されることも多く、これら顔の生理的変化が何らかの心理状態を反映していると仮定できる。 本研究では、顔面の汗腺活動及び皮膚血流変化の心理生理学的指標としての可能性について検討し、さらに各種感情喚起時のこれらの反応が、他者の存在によってどのように変容するかを調べ、顔面の汗腺活動及び皮膚血流変化が有した対人コミュニケーションにおける機能・意味について考察する。 平成24年度では、未だ詳細な検討が行われていない顔面の精神性発汗現象を中心に検討を行った。額、頬、鼻尖から皮膚電位活動を測定し、各種感情喚起刺激・課題を実施した結果、皮膚電位活動の明瞭な変化が示され、顔面部での精神性発汗現象を確認した。 平成25年度においては、顔面部で確認された精神性発汗現象としての皮膚電位活動を、どのように定量化するかについて検討した。特に、眼球運動・瞬目の影響が想定されたため、これらノイズの影響を最小限にとどめ、より適切に定量化する簡便な方法について検討した。その結果、眼球運動は顔面の皮膚電位活動には影響を与えず、瞬目のみが一過性の電位変化を生じることが明らかとなった。瞬目の影響を抑える方法として中央値による定量化法を算術平均との比較の中で検討し、その有効性を確認した。そして、明瞭な顔面皮膚電位の変化を惹起する歌唱課題時の顔面各部位の反応を中央値法を用いて定量化し、有意な増加と部位間の反応性の相違を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は顔面部の精神性発汗という先行研究のほとんどない現象について確認し、分析することを目的としたため、その現象をどのように捉え、確認をするかという方法論から探索的に検討をする必要があった。特に顔面部の汗腺活動をどのように電気生理学的に捉え、分析をするかというところから検討をする必要があった。平成24年度では、従来から手掌で記録する精神性発汗現象の記録方法としてある皮膚電位法を顔面部に適用し、探査電極部位(額、頬、鼻尖)と基準電極部位(耳朶)を選定し、各種感情喚起刺激・課題時の明瞭な電位変化を確認し、この方法により顔面部での精神性発汗現象を電気的に捉えることができることを示した。しかし、このような現象の生起を明示するためには統計学的に反応の有意性を示す必要があるため、得られた顔面部皮膚電位活動を定量化する必要があった。その際、考慮しなくてはならないことは、顔面皮膚電位活動に混入する眼球運動と瞬目を発生源とするノイズの影響であった。このノイズとそれに対応した適切な定量化の方法を、平成25年度では新たに追加的に行った実験を通して検討した。眼球運動・瞬目時の顔面各部の皮膚電位活動の変化の有無とパターンの比較を通して、算術平均による定量値と比較検討することにより、中央値法が簡便で妥当な定量化の方法であることを明らかにした。 この定量化の方法が決まったことを受けて、各種課題時の顔面各部の皮膚電位活動について定量化を行い、統計的な解析を行うことができるようになった。既に計測しているデータについて、定量化し分析を開始している。また、実験については、当初予定していた観察者の有無の効果を検討するべく、各種感情喚起刺激や課題時のデータを現在収集中である。
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今後の研究の推進方策 |
観察者のいる条件といない条件とを設定し、各種感情喚起刺激・課題を実施し、対人コミュニケーション状況における顔面部の生理学的変化の機能について検討する。そのための実験を現在継続して実施中である。顔面部皮膚電位活動と同時に記録している顔面皮膚血流量、心拍数、末梢皮膚血管緊張度等の各種生理指標について定量的・統計的に分析する。異なる感情価を有した刺激や課題別に、皮膚電位活動及び皮膚血流量と他の生理指標の反応変化の特徴比較や顔面部位間の反応パターンの比較等を通して、顔面汗腺活動と皮膚血流変化とが有する対人コミュニケーション上の機能・意味について考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品として予算計上していた計測器のセンサーが、前年度から不具合なく継続的に使用でき、購入しなかったため、次年度使用額が生じた。 現在も継続して実験を続けているので、電極、電池、センサーやコード類等の実験関連消耗品と実験参加謝金、また、関連資料や書籍、学会参加・研究打ち合わせのための旅費として予算を使用する予定である。
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