研究課題/領域番号 |
24530800
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 京都光華女子大学 |
研究代表者 |
竹西 正典 京都光華女子大学, 人文学部, 教授 (60216926)
|
研究分担者 |
竹西 亜古 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (20289010)
金川 智惠 追手門学院大学, 経営学部, 教授 (70194884)
原田 章 追手門学院大学, 経営学部, 准教授 (10263336)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | リスクコミュニケーション / 原子力災害 / テキスト分析 |
研究概要 |
本研究の目的は、原子力災害時における国民への情報提供やリスクコミュニケーションのあり方を、東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故当時の検証から明らかにすることである。そのために本研究では、先行研究(竹西ほか, 2008)で構築されたモデルを踏まえ、福島事故当時にリスク管理者(東京電力および政府)によって行われた情報提供やリスクメッセージのテキスト分析を行い、それらの特徴を明らかにするとともに、国民に対するリスクコミュニケーションとして、どのような過不足があり問題点を生じさせていたかを検討する。 本年度は、先行研究と予備的分析に基づき、リスク管理者のメッセージ内容を分析するための基準となる要素を整理した上で、評価シートを確定する作業を行った。その上で、事故発生から1ヶ月間になされた東京電力の情報提供および政府官邸による国民への発表の内容を、評価シートを用いてテキスト分析した。分析は、1) 一文あるいは一箇条書きを1単位とし、2) 当該単位に含まれる要素をすべて抽出する方法で行った。また、3) 既に提供された情報の繰り返しを「既存情報」とし、時系列における変化を検討できるようにした。評価者は有権者4名であり、次のことが明らかになった。 東京電力の発表は、1) 既存情報が多く冗長であり、新規かつ重要な情報が埋もれがちであること、2) 自らの安全管理姿勢や努力を明言する一方で、事象そのものの安全性・危険性に関する微妙な言い回しを多用していること、3) その結果、受け手に不明瞭さによる不満感・不信感を少なからず与えること等が明らかになった。また、政府発表に関しては、国民や避難対象住民への具体的指示があり、受け手の感情に理解や配慮を示しているが、そのことによってリスクの伝達が曖昧になっていること等が明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) テキスト分析の基準となるリスクメッセージ評価要素を整理し、評価シートを確定した。 2) 評価シートを用いて東京電力福島第一発電所における原子力災害発生から1ヶ月間にわたるリスク管理者(東京電力および政府)の発表したリスクメッセージをすべて分析した。 3) テキスト分析から、ぞれぞれのリスク管理者のメッセージの特徴を明らかにした。 4) リスクメッセージの要素が受け手に与える影響を検討するため、刺激文を操作した質問紙調査の企画を検討した。(次年度実施) 5) より小さな単位でのテキスト分析の可能性を検討し、分析ソフトを選定した。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度のテキスト分析によって得られたデータの解析をさらに進める。引き続く解析では、今回の原子力災害時のリスクメッセージの特徴を定量的に明らかにするとともに、時系列による変化を検討し、原子力災害の進行(クライシスとリスクの混在状態)との対応を考察する。また、特徴的な要素を操作した刺激文を作成して呈示する手法を用いて、有権者を対象にした調査を行い、リスクメッセージの要素が受け手に与える影響を明らかにする。加えて、より小さな単位(語句単位を想定)でのテキスト分析の実施可能性を検討する。以上のことから得られた結果を整理し、有効なリスクコミュニケーションのあり方に関するモデルを再検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
1) テキスト分析結果の定量的解析のための費用 a. 研究補助謝金:評価シートによるテキスト分析結果のエクセル入力の費用、より小さな単位でのテキスト分析に対応させるためのメッセージ入力の費用、原子力災害の進行状況を整理するための資料整理の費用等 b. 物品費:共同研究者間で共用するテキスト分析用ノートパソコン、消耗品等 2) メッセージ要素を操作した郵送調査のための費用 a. その他:印刷費、郵送費、雑費、b.研究補助謝金:郵送調査のデータ入力等、c.物品費:トナーなど消耗品 3) モデル再検討のための費用 a.物品費:リスク関連図書、東日本大震災関連図書、統計解析関連図書、消耗品など
|