研究課題/領域番号 |
24530816
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
金澤 忠博 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (30214430)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 超低出生体重児 / 発達障害 / 早期発見 / 早期介入 / 自閉症スペクトラム障害 / 学習障害 / 注意欠陥多動性障害 |
研究概要 |
<学習障害(LD)を中心とした発達障害の早期発見>2012年度は、発達障害の中でも学齢期になって顕在化するLDに焦点を当て、8歳齢の超低出生体重児を対象として、1次検診として、WISC-IIIによる認知能力の評価、ASSQ 、ADHD-RS-4、LDI-Rによる、自閉症スペクトラム障害(ASD)、ADHD、LDの評価、2次検診として、K-ABC、読み能力の検査と視線行動の測定、音韻・実行機能・注意機能の検査などを実施して認知機能や聴覚的・視覚的情報処理の特性を明らかにし、Conners3など併用し、学習面・行動面での困難さに関わるメカニズムを明らかにし、個々の認知特性に合わせた支援や治療教育の方法を検討し実施すべく、検診をスタートさせた。現在24名の児が受診している。 <ASD児の早期介入>超低出生体重児における自閉症スペクトラムの出現率は10%を越え、二次障害も認められ、児の集団生活への適応に深刻な影響を及ぼす。特に、発話の見られない重度のASD児への具体的支援は、保護者への育児負担を軽減する意味でも、喫緊の課題である。そこで、早期介入を実施してその効果を調べ効果的な早期介入の方法論を確立する目的で、重度のASD児9名(4歳)を対象にPECS(絵カード交換式コミュニケーションシステム)による自発的コミュニケーションの訓練や認知課題など構造化された場面での個別療育を実施した。その結果、週1回50分×20回の訓練により、自発的要求行動の有意な増加が見られただけでなく、共同注意の開始行動(IJA)が増加し、アイトラッカーによる実験から共同注意の応答(RJA)が対照群(10名)に比べて増加することが分かった。本研究の結果から、PECSを中心とした訓練により自発的コミュニケーションが増えるだけでなく、全てのコミュニケーションの土台となる共同注意の獲得も見られる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初幼児期の超低出生体重児を対象に発達障害の早期発見を計画していたが、フィールドの都合もあり、まずは、学齢期に顕在化する学習障害とその背景にある、読み能力、音韻・実行機能・注意機能の評価を行うことになった。協力病院での研究倫理審査に時間がかかり、開始が遅れた。そのため、早期発見の研究と並行して早期介入の方法論的検討を進めることにし、重度のASD児を対象にPECSによる自発的コミュニケーションの訓練を実施し、行動観察やアイトラッカーによる実験により介入効果を調べた。その結果、予想を超える効果が見られ、早期介入の有効性が確認された。
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今後の研究の推進方策 |
超低出生体重児を対象とした発達障害の早期発見に関しては、引き続き学習障害とその背景となる読み能力・音韻認知・実行機能・注意機能の問題を明らかにし、早期介入のポイントを具体的支援の可能性を探索的に調べる。幼児期の超低出生体重児については、1歳半と3歳の発達検査場面にESCS(Mundy et al., 2003)による共同注意の評価を加え、通常の診療体制の中で実施可能なASDの早期発見の方法を探る。早期介入については、2012年の介入実験からASD児のPECSによる訓練の有効性が確かめられたことから、さらにサンプルサイズを増やし、方法論的な改善を行い、加えて、保護者や児が所属する通園施設との協力を進めることで、家庭や保育施設を含めた支援体制の構築を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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