研究課題
<学習障害(LD)の早期発見>2013年度は、平均12歳齢(36名)の超低出生体重児を対象として、自閉症スペクトラム障害(ASD)、ADHD、LDの評価、更に、平均8歳のELBW児19名を対象に読みとそれに関連する能力および音読時の視線の動きを計測した。K-ABCを施行し、知的障害の認められない17名を分析対象とした。読み能力は「鳥取大式単語音読検査」を行った。語彙能力として絵画語彙発達検査を行った。認知機能としてRAN能力と音韻意識能力を計測した。その結果、読みの正確さは問題ないが、読み速度は標準をかなり下回った。また、RAN能力と音韻意識能力の両方が読みの成績に影響を与えていた。さらに、単語に停留する視線の回数が読みの成績に影響を与えていた。学習障害の早期発見のために、視線の動きやRAN能力、音韻意識能力が活用できることが示唆された。<ASD児の早期介入>ELBW児におけるASDの出現率は13.3%と高く、児の集団への適応を著しく困難にする。特に、発話の見られない重度のASD児への具体的支援は、保護者への育児負担を軽減する意味でも、喫緊の課題である。そこで、早期介入の方法論確立のため、2012年度に引き続き、重度のASD児8名(4歳)を対象にPECS(絵カード交換式コミュニケーションシステム)による自発的コミュニケーションの訓練や認知課題など構造化された場面での個別療育を実施した。2012年度では、PECSの訓練により、個別療育中の自発的要求行動が顕著に増加し、共同注意の開始行動(IJA)だけでなく応答行動(RJA)も増加することが分かったが、2013年度は、さらに日常の集団療育場面でも介入群にIJAの増加が認められた。この結果から、個別療育によるPECSの訓練による介入効果は、集団療育場面の行動にも汎化しうる可能性が示され、さらにケースを増やしての検証が求められる。
2: おおむね順調に進展している
当初幼児期の超低出生体重児を対象に発達障害の早期発見を計画していたが、学齢期に顕在化する発達障害としての学習障害の早期発見を目指し、学習障害とその背景因子として読み能力、音韻・実行機能・注意機能の評価を行なった。他方、2012年度に引き続きASDの早期介入の方法論的検討を介入効果の検証を行った。新たに8名の重度ASD児にPECSによる自発的コミュニケーションの訓練を実施し、行動観察やアイトラッカーにより介入効果を調べた。その結果、個別療育の場面だけでなく日常の集団場面にも介入効果が汎化する可能性を確認した。
超低出生体重児における発達障害の早期発見に関しては、引き続き学習障害とその背景となる読み能力・音韻認知・実行機能・注意機能の問題を明らかにし、学習障害の早期からの支援の方策を検討する。幼児期の超低出生体重児については、1歳半と3歳の発達検査場面の行動を共同注意の有無に注目して分析し、通常の診療体制の中で実施可能なASDの早期発見の方法論的検討を行う。早期介入については、2012年~2013年度にかけての介入実験からPhase1-3までのPECSによる訓練がASD児の自発的コミュニケーションの獲得に及ぼす効果が見いだされたことから、さらにサンプルサイズを増やし、家庭や通園施設への汎化をも狙った方法論の確立を目指す。
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日本周産期・新生児医学会雑誌
巻: 50(1) ページ: 110-114.
PLoS ONE
巻: 8(8) ページ: e70915. 201308