研究実績の概要 |
平成27年度は,平成26年度の教師の被援助志向性尺度調査を受けて,昨年の小学校教師と同じ市に勤務する中学校教師200名を対象に調査を実施した。尺度は,職場風土認知尺度(淵上,2006),生徒の関わりにくさ尺度(谷口,2007),教師の被援助志向性尺度(田村・石隈,2001),教師用バーンアウト尺度(Maslach & Jackson, 1981; 久保・田尾,1994;田村・石隈,2001)であった。チーム連携については「援助ニーズの高い子どもは,教師同士のチームで子どもを支えている」などの4項目で尋ねた。共分散構造分析で分析した結果,教師の被援助志向性は,職場雰囲気を介してチーム連携に影響を与えていた。「生徒の関わりにくさ尺度」はチーム連携と関連がなかった。これは平成26年度の小学校教師を対象にした研究と同様の結果であった。 更に,小学生4年生~6年生716名を対象に,教師に対する被援助志向性,友人に対する被援助志向性が,学校適応にどのように影響するのかを明らかにした。なお調査した尺度は,河村(1999)が開発したQ-U(図書文化社)のスクールモラール尺度,ソーシャルスキル尺度,学校適応尺度の被侵害得点であった。共分散構造分析の結果,教師に対する被援助志向性尺度は男女ともに,いじめ被害を測定する被侵害尺度に影響を与えないことが明らかになった。なお,友人に対する被援助志向性尺度は被侵害尺度得点に負の影響を与えていた。今回,2年にわたり,フィールドを提供してもらったA市のZ小学校,及びA市教育委員会を対象に,今回の一連の研究で明らかになったことをベースに,教師の連携を高めどのように協働的雰囲気を醸成するかについて研修を行った。更に,一連の研究成果を被援助志向性研究の第一人者であるキャンベラ大学リクウッド教授らの前で発表した。
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