研究課題/領域番号 |
24530821
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
瓜生 淑子 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (20259469)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 聴覚障害幼児 / 手話の早期導入 / 音声日本語 / 日本手話 / 統語 / コードブレンディング / コードミキシング / 手話文化 |
研究概要 |
1)単著論文「実践段階に入った聴覚障害児教育における手話の早期導入」(奈良教育大学紀要(人文・社会科学) Vol.61 no.1 p.57 -67)を発表した。この論文で、すでにここ20年近くにわたって日本のろう教育でも早期からの手話の導入の実践が始まっていることを念頭において、手話の早期導入の成果と課題について整理した。①80年代から始まった北欧のバイリンガルろう教育の実践も聴覚活用や口話付き手話を子どものニーズに合わせて認めていくなど、”フレクシブル”な「変成」を余儀なくされてきており、第一言語(手話)から第二言語(音声言語による書き言葉)への移行の課題は先進国の事例でも引き続い大きな課題となっている。②近年の新生児聴覚検査の普及と人工内耳の普及によって、世界的動向として聴覚活用ニーズが拡大している。③日本でも手話の導入の実践の成果と課題をある程度、整理することが可能な時期に来ている。以上の認識に立った上で、①手話に対するメタ言語能力の育成、②幼児期からの手話文化の育成の必要性、③言語獲得期からの手話と音声言語の併用をどう考えるか、④「手話付き日本語」は「伝統的手話」との対立物なのか「手話のバリエーション」なのかなどを課題として提案し検討を加えた。 2)ろう学校幼稚部3歳児クラスへの定期的な訪問観察を行い、観察データを収集した。 3)あわせて、3歳児クラスの補聴器装用女児の手話及び音声言語の発達について個別データ収集をしている。2)3)は次年度も継続される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)本研究のテーマは、短期間の観察等では十分な検討が出来ないが、フィールドである、ろう学校幼稚部では、担任教員・及び保護者に観察や言語発達調査への協力をして貰っており、具体的な実践や子どもの姿に接する中で、「手話と口話」という古くて新しい課題を今日的に検討できる場を得ることが出来たので、次年度以降の研究につなげていける。 2)国際的なろう教育や手話獲得研究の動向について 3rd International Conference on Sign Linguistics and Deaf Education in Asiaなどへの参加によって把握することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
1)収集したデータの手話の分析に関して、手話通訳資格を持つ人材に研究協力をして貰える見通しが立ったので、この間収集したデータや今後収集されるデータについても、より精緻に記述し分析できる。 2)観察しているクラスの対象児及び個人観察対象児が4歳児になるので、言語も幼児期後半の発達の時期となる。語連鎖が増え、複文や接続詞も増えてくる時期である。メタ言語意識も発達する時期である。これらについて、手話でもその獲得が進むであろう時期になるので、分析データが飛躍的に豊富になるであろうことから、様々な視点から分析できるだろう。上記、言語諸要素の増加はもちろんだが、code-switchingなど、手話と口話の併用においても様々なメカニズムの分析が可能となる時期である。
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次年度の研究費の使用計画 |
1)手話通訳者にデータ分析に関わって貰うための謝金を有効に使い、データ分析の精緻化・効率化を図りたい。 2)手話言語の国際学会であるTheoretical Issues in Sign Language Research (TISLR) Conference 11(London)への参加や、 Centre for Advancement in Inclusive and Special Education, Faculty of Education, The University of Hong Kong の訪問により、国際的な手話教育や手話研究の動向について情報収集したい。
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