研究課題
本研究の目的は,日本人青年のアイデンティティ形成の特質を,比較文化的な視点から明らかにすることであった。具体的には,(1)近年多くの国で用いられているアイデンティティ尺度であるUtrecht-Management of Identity Commitments Scale (U-MICS)を用いて,日本人青年のアイデンティティ形成の特徴を検討する(研究1),(2)得られた知見を諸外国の青年と比較して日本人青年の特質を明らかにする(研究2)。本年度は研究2を行い,以下の結果を得た。1.イタリア人青年との比較による日本人青年のアイデンティティ形成の特質18-30歳の日本人959名,イタリア人1513名を対象に,人生のこの時期についての認識を比較検討した。その結果,日本人青年はイタリア人青年より,人生のこの時期を可能性のある時期と認識していた。各国の中で性差と職業差(学生・社会人)が見られたが,国による差より小さかった。この結果は,日本人青年がイタリア人青年より,人生のこの時期をアイデンティティの模索期であり,社会がそれを容認していると考えていることを示唆する。2.10カ国比較による日本人青年のアイデンティティ形成の特質ヨーロッパ6カ国,中東(トルコ),アジア(中国,日本,台湾)の18-25歳の大学生6118名(うち日本人557名)を対象に,アイデンティティ形成の特徴を比較検討した。その結果,アジアの大学生はヨーロッパの大学生より,アイデンティティのコミットメントの得点が低く,コミットメントの再考の得点が高かった。これは,日本の大学生はヨーロッパの大学生よりアイデンティティが不安定であることを意味する。日伊比較の結果も合わせると,日本の青年はヨーロッパの青年よりアイデンティティの感覚が低く,アイデンティティの模索を長期間行っている可能性が示唆された。
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Emerging Adulthood
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1177/2167696815569848
Assessment
10.1177/1073191115584969
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産業ストレス研究
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