研究課題/領域番号 |
24530828
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中村 知靖 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (30251614)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 表情認知 / 項目反応理論 / 情動 / 教育心理学 |
研究概要 |
質問紙による精度の高い表情認知検査を開発するために大学生345名に対して成人向け集団式表情認知検査を実施した。表情刺激は男性2名,女性2名の計4名が表出した喜び・怒り・驚き・悲しみの4表情と真顔の表情画像を利用し,表出者ごとに合成比率を30%から60%としたモーフィング画像を4表情ごとに5枚,計20枚を作成した。表出者は4名いるので,最終的に80枚の刺激を用意した。 収集されたデータに対して四分相関行列を利用した因子分析を行った結果,固有値は18.277,5.117,3.402と推移したことから,一次元性があると判断した。次に,項目反応理論における2パラメーターロジスティックモデルによる分析を行い,刺激の識別力と困難度を算出した。先ほどの因子分析の結果,因子負荷量がマイナスとなった6刺激は項目反応理論の分析対象から外した。 項目反応理論の分析対象となった74刺激の識別力の平均は0.688で,困難度の平均は-1.736であり,全体として識別力の面では問題はなく,困難度についてはやや易しい傾向にあった。実用的な面を考慮すると80刺激を利用した検査は回答者に負担がかかるため,以下の方針で刺激を選定した。正答率が95%以上,5%以下の刺激は反応に関して個人差があまり無いと判断し,また,困難度,表情そして検査用紙の構成を考慮し,最終的に表出者ごとに8刺激を選んだ。したがって,検査として採用された刺激は32となった。 上記の32刺激からなる検査を成人向け集団式表情認知検査とした。本研究の成果によって小松・中村・箱田(2012)の成人版表情認知検査が市販されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度当初に予定していたとおり,大学生300名程度に対して表情認知検査を実施し,項目反応理論を利用して表情刺激の特徴を算出し,その指標に基づいて刺激を選定し,紙媒体による集団式表情認知検査を開発したことから,研究計画に基づいて研究が順調に進展していると言える。また,本研究成果に基づいて成人版表情認知検査が市販されており,一定の成果があったものと考えられることから評価区分(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
紙媒体による表情認知検査とコンピューターを利用した表情認知検査による能力値の比較を行うことによって,将来開発予定のタブレット端末を利用した表情認知検査の開発に繋げたいと考えている。また,成人版のデータに関しては,大学生だけでなく,高齢者も含む幅広い年齢層からデータを収集し,成人版表情認知検査の精度を高めたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度,成人版表情認知検査を開発するために調査や実験を実施したが,当初計画していたよりも少額の謝金で調査や実験を実施することができたため,次年度利用可能な研究費が生じた。データ数そのものは当初計画通りのため研究遂行上の問題は生じていない。次年度の使用計画としては,成人に関するデータを充実させ検査の精度を高めるために,高齢者を含めた幅広い年齢層からのデータを収集するための謝金として利用することを予定している。
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