研究課題/領域番号 |
24530828
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中村 知靖 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (30251614)
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キーワード | 表情認知 / 項目反応理論 / 情動 / 教育心理学 |
研究概要 |
表情認知検査と主観的情動知能検査ならびに一般知能検査との関連を調べた。実験参加者として大学生25名に対して,成人版表情認知検査,主観的情動知能検査,一般知能検査を実施した。その結果,表情認知検査と質問紙による主観的情動知能検査との間には有意な相関はなかった。このことは,表情認知検査で測定している概念と主観的情動知能検査で測定している概念とが異なるという弁別的妥当性を示している可能性がある。同様に,表情認知検査と一般知能検査との間にも有意な相関がなかったことから,両検査は異なる概念を測定している可能性がある。 次にこどもの表情刺激を利用した場合と,大人の表情刺激を利用した場合とで測定される能力に違いがないかを検討するためにこども版と成人版表情認知検査との関連を調べた。大学生60名に対してこども版表情認知検査と成人版表情認知検査を実施し,両検査の項目反応理論に基づいた能力値をもとに検査間の相関係数を求めた。その結果r(58)=.52, p<.01であり有意な正の相関が得られ,両検査はある程度似た能力を測定していることが示された。 最後に,成人の表情刺激を利用したときに,大学生と小学生との間で刺激の困難度に違いがないかという項目差異機能について検討した。大学生60名,小学生5・6年生115名に対して成人版表情認知検査を実施し,項目反応理論に基づいた項目差異機能分析を行った。その結果,悲しみの2項目において小学生の方が大学生と比べ有意に困難度が高く,驚きの4項目において大学生の方が小学生と比べて有意に困難度が高いことが分かった。今後,データ数を充実させ,さらに中学生も加え,項目差異機能についてさらに検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り,集団式表情認知検査の成人版ならびに子ども版を開発し,大学生ならびに小学生に対して調査を行い,検査の妥当性を検証したことから,研究の目的に沿って研究が進められていると判断することができる。特に,成人版表情認知検査での項目反応理論に基づいた項目差異機能分析で特定の刺激において小学生と大学生との間で困難度に有意な違いが見られるといった興味深い結果が得られており,一定の成果があったものと考えられることから評価区分(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
項目反応理論に基づいた項目差異機能分析に関しては,小学生だけでなく,中学生も含めて調査を行い,成人の表情を刺激とした場合の表情認知に関して受検者による違いを明らかにしてきたい。また,子どもの表情を利用した場合の小学生,中学生,大学生の項目差異機能も検討していく予定である。さらに,試行段階となるがタブレット端末を利用したテストの開発とテストの実施を行い,冊子版との比較について検討したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度雇用していた学術研究員の方が年度途中で異動となり人件費が予定していた使用額よりも低くなったことと,幅広い年齢層からデータ収集を行うために高齢者を対象とした調査を予定し,謝金を用意したが,調査協力者を探すのが予想より困難で,調査対象者を小学生としたところ,謝金が不要となったため。 小学生ならびに中学生を対象とした調査を複数の学校で行う予定であり,調査用紙の印刷,現場へのフィードバックを迅速に行うためのデータ入力ならびにデータ解析のためのコンピュータシステムの購入費として利用する予定である。
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