研究課題/領域番号 |
24530829
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
假屋園 昭彦 鹿児島大学, 教育学部, 教授 (30274674)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 対話活動 / 対話指導方法 / 対話評価 / 授業デザイン |
研究概要 |
本研究は,小学校での授業に対話活動を導入する目的が論理の構築力という思考力の育成にある,という理論的枠組みに立つ。そのうえで児童の論理の構築力形成に資する対話指導力をもった教師を育成するための授業デザイン開発を目的とした。上記の目的達成のために実施した研究において,24年度は以下のような実績をあげた。 第一に,これまで未確立であった対話の指導方法および評価規準を開発した。対話の指導方法の開発は,これまで研究代表者が確立してきた教師の指導的参加法という指導方法の内容をさらに精緻化するかたちで実施した。教師の指導的参加法は,教師が児童の対話に積極的に参入するかたちの指導方法である。この参入時に生じる教師発問の種類はこれまでの研究で整理していた。24年度は,このときの教師発問のなかで特に対話を深化させる機能が高い少数の中心発問を同定することに成功した。この中心発問を教師に使用してもらうことによって,効果的な対話指導方法が可能になる。 第二に,次のような対話の評価規準を開発した。すなわち,これまで対話の指導方法と評価方法が未確立であった主要原因は対話展開の自在さにあると思われていた。そこで対話展開をあらかじめ予測できれば,対話展開に即した評価が可能になる。これまで研究代表者は,思考力向上のための対話課題としては抽象命題がふさわしいこと,そして抽象命題型対話課題が提示された場合,対話は具象命題と抽象命題のサイクルで展開することを見出した。この知見にもとづくならば対話展開の予測は可能であり,その結果,対話展開の予測を評価規準にして対話内容を評価できるという仮説が成り立つ。そして,この評価方法が可能であることを授業実践をとおして検証した。 第三に,以上の知見を授業全体に適用した授業デザインを開発し,小学校低学年に授業を実施し,実践可能であることを検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ,交付申請書に記載した研究計画は順調に実施されていると判断できる。研究計画に記載した児童の対話活動における指導方法と評価方法の確立については,24年度に実施した研究によって達成された。24年度の研究内容は,これまで研究代表者が確立した児童同士の対話活動に対する教師の指導方法をさらに詳細な内容にし,対話展開にもとづく評価規準を開発した。またこれらの知見を授業全体に拡大して,児童の思考力育成を目指した対話型授業デザインモデルを開発した。そしてこの授業デザインモデルによる授業実践が可能であることを検証授業によって確かめた。検証授業の意義は次の点にある。従来,小学校において児童同士の対話を導入した授業は主に高学年で実施されていた。24年度は上記の対話型授業デザインにもとづく検証授業を1年生に実施し,低学年でも対話型授業が可能であることを実証した。この成果は,特筆すべき点であると判断できる。これらの知見は,24年度中に3本の研究論文および2回の学会発表として公表された。 さらに以上の知見を学会内での公表だけで終わらせるのではなく,広く小学校に普及させるための活動をも行っている。第一に,この検証授業の映像を研究代表者が主催する小学校教師との研究会にて検討した(合計3回)。そして研究会に参加している小学校教師によってこうした授業が可能であるとの合意を得た。第二に,研究代表者が提唱した授業デザインは,研究レベルだけではなく,鹿児島県内の小学校によっても導入されつつある。24年度は本授業デザインが鹿児島県薩摩川内市内および鹿児島県大島郡喜界町内の小学校において実践された。このように現在進めている授業デザインの開発研究から得られた知見は学会での公表だけではなく,実際に小学校のなかで実践され,活用されつつある。以上の諸点から研究計画は順調に推移していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策は以下のとおりである。第一に,24年度に実施した児童の思考力育成を目指した小学校低学年向けの対話型授業デザインの検証授業の内容分析を行い,授業デザインモデルを策定する。このモデルを論文としてまとめ,公表し,低学年用対話型授業デザインモデルを確立する。第二に,低学年用の授業デザインモデルを土台に小学校の中学年,高学年向けのモデルを作成する。そしてこの授業デザインモデルにもとづく検証授業を実施する予定である。この検証授業をとおして中学年,高学年向けの授業デザインモデルを確立する。 25年度はまず中学年,高学年向けの検証授業を行い,その内容分析を行う。次にこれらの授業の映像を研究代表者が主催する小学校教師との研究会で検討し,通常の授業のなかでの実施可能性についての検討を行う。 25年度から26年度にかけては,上記の検証授業とその分析と検討をとおして作成した中学年用と高学年用の対話型授業デザインモデルを策定し,論文化し,公表する。さらに本授業デザインモデルは,学会や論文だけでの公表にとどまらず,できるだけ通常の公立小学校でも実践してもらう予定にしている。この実践は研究代表者が主催する研究会に参加している小学校教師に依頼する。また鹿児島大学教育学部附属小学校および代用附属である鹿児島市立田上小学校が毎年鹿児島県下の小学校教師を対象に開催している研究公開では,25年度の道徳の授業において本授業デザインが活用される予定になっている。また研究代表者が担当する各種の教員研修や教員研究会でも積極的に紹介する予定である。26年度には小学校の低,中,高学年用の対話型授業デザインについての報告書を作成する。この報告書は,対話指導の経験が浅い教師が日常の授業づくりで活用できるような内容とする。そして対話指導力をもった教師育成用のテキストとして活用できるような内容にする。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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