研究課題/領域番号 |
24530831
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研究機関 | 東北福祉大学 |
研究代表者 |
庭野 賀津子 東北福祉大学, 総合福祉学部, 教授 (30458202)
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研究分担者 |
坪川 宏 東北福祉大学, 健康科学部, 教授 (30227467)
田邊 素子 東北福祉大学, 健康科学部, 講師 (30513618)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | NIRS / 乳児 / 表情認知 / 親性発達 / IDS / 若年成人 / 音響分析 / 脳機能計測 |
研究実績の概要 |
ヒトの顔認知の視覚情報処理の際には、表情から感情を認知する扁桃体、上側頭溝、眼窩前頭皮質等のネットワークでの処理が行われると考えられている。また、ミラーニューロンシステムと関連する心的要素である共感性も表情認知において重要とされている。この共感性は、母親が言語獲得前の乳児の表出する声や表情の読み取りにおいても必要とされる要素であろう。この乳児の表情認知において、育児未経験の若年成人においては、どのような脳反応が見られるのであろうか。そこで本研究では若年成人(young adults)を対象とし、乳児の表情認知時、および乳児の表情の違いに応じて対乳児発話(IDS)を表出しているときの脳反応を、近赤外線分光法(NIRS)によって検討することを目的とした。 研究の結果、乳児の表情変化を視聴する課題と、表情変化に対応して発話する課題とでは、乳児の表情に対する前頭部の脳の活性が異なることが明らかとなった。賦活の有意差は、いずれにおいても乳児の非啼泣時の方が有意に高くなっており、若年成人は乳児の啼泣状態の認知時及び啼泣時に話しかける場合は前頭部の賦活が下がることが示された。また、IDSの音響分析の結果、乳児の非啼泣時のIDSの方がよりIDSの特徴が出ていた。乳児の非啼泣の表情は啼泣と比較して複雑であったと考えられ、乳児の表情に対応して話しかけるために、視覚を中心としたさまざまな情報を統合処理して適切な言葉がけを選択するという精神活動が、啼泣時よりも非啼泣時の方がより活発に行われたことを示唆する結果となった。 今回、賦活が確認された背外側前頭前野は帯状回や頭頂葉、尾状核、海馬、視床との密接な繊維連絡が指摘されており、今後それらの部位と乳児の表情認知との関連について、MRIを用いてさらなる検討をしていく計画である。本研究で得られた知見を、今後、親性発達支援の基礎資料として活用していきたい。
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