研究課題/領域番号 |
24530832
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
福島 朋子 岩手県立大学, 社会福祉学部, 准教授 (10285687)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 教育系心理学 / 生涯発達心理学 / 子どものいない夫婦 / generativity / intimacy / エリクソン |
研究概要 |
成人期発達において親になることの意義を探索する研究は多い。その反面、親にならなかった成人の発達を把握しようとする研究はほとんど見られない。本研究は、子どもがいない場合であっても世代継承的な(generative)意識や行動は生じうると考え、「子どものいない」夫婦を対象に、面接調査を行ってそれを確認しようとするものである。2012年度は、子どもを持つことを許されなかったハンセン病元患者に関して、これまでの調査資料を再分析し、また面接調査を実施した。その結果、次の点が示唆された。 1)戦後まもなくまでに療養所内で結婚した夫婦では、その後入所してきた児童の仮親になった人々が存在する。これは、当時の療養所における疑似家族的な運営によるものであったが、子どもを持つことが許されなかった夫婦は疑似的な子育てを経験することができ、親のいない児童には見守り親が与えられるという働きをもつものであった。2)1)の児童の多くはその後退所し、残された夫婦では療養所の運営と待遇改善のための運動にあたる夫とそれを支える妻という形が一般的でなり、そうしたなかで花や盆栽を育て、イヌ・ネコを飼い、そして野菜を栽培した。また、療養所で奨励されていた文化・芸術活動にも取り組んだ。3)しかし、中・高齢期になった80年代になると、身体的な衰えから、2)の動植物の飼育や栽培は規模が縮小し、2000年代では止める人々も出てきた。反面、この頃から、ハンセン病元患者に対する社会的関心が増し、それまで積み重ねてきた文化・芸術活動を社会に問う人々も多数現れた。90年代半ばの予防法廃止や2001年の国賠訴訟勝訴を経て、元患者としての自らの経験を残そうとする、語り部活動に取り組む人々も現れた。4)1)~3)から、子どもを持つことを許されなかったハンセン病元患者の生涯において、世代継承的な意識や行動が推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度のねらいは、1)ハンセン病元患者に対する面接調査を世代継承性の観点から行って、彼らの世代継承性への意識や行動、およびそれらと親密性との関連を把捉する。2)そこで得られた研究方法や分析の枠組みを活用しながら、一般的な「子どものいない夫婦」に対する面接調査への適用可能性を吟味する。の2点であった。1)については当初予定以上に把捉が進行しているが、2)については、当初予定通りの進展であったものの、方法論的な課題がないわけではない。以上から、「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度実施した、ハンセン病元患者に対する面接調査を通して得られた研究方法や分析の枠組みの吟味をし、そのうえで一般的な「子どもを持たない」夫婦の調査へと展開していくこととする。同時にハンセン病元患者に対する調査結果をとりまとめ、成果発表していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該研究費が生じた状況としては、調査出張の宿泊日数が当初よりも少なくなったことがあげられる。平成25年度の国内旅費にこれを加え、十分な調査時間を確保するようにする。
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