研究課題/領域番号 |
24530836
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
河村 茂雄 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (40302046)
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キーワード | 学級集団 / 教師の指導行動 / 学級集団発達 / 学習意欲 / ソーシャルスキル / 学びあい / 友人関係 / 学級活動意欲 |
研究概要 |
本研究は、生徒の対人交流・集団活動意欲、学習意欲、進路意識と学級集団の状態との関係を実証的に明らかにし、学級集団発達の視点から、これらの意欲を向上させる学級集団の状態像と、その形成モデルを提案することが目的であった。平成25年度は、平成24年度と同様の取組を継続し、研究テーマに関するデータの蓄積を重ね、研究を計画通りに展開することができた。内容は下記の通りである。1)学級集団の状態と生徒の対人交流・集団活動意欲、学習意欲、進路意識との関係、学級集団の状態を規定する要因を、1年の中で4回にわけて調査・分析した。2)4回の分析結果を時系列の中で整理し(成熟ー後退という両方向で整理する)、学級集団のいくつかの発達過程とそれを規定する要因を見出した。3)その中から目的とする学級集団形成の発達モデルを抽出し、各段階ごとの学級集団の状態を規定する要因を整理した。 さらに、新たに平成25年度は、標準化された学力検査と平成24年度の結果から作成された学級集団の状態・教育作用を測定する尺度リスト、教員組織への所属意識を測定する尺度リストも実施でき、次の成果を得ることができた。(1)学級集団の状態・教育作用を測定する尺度の完成、(2)学級集団の状態ごとの生徒たちの学力の定着度を検討するデータ、そして前年度から継続することによって、(3)前年度からの継続学級と学級編成替えのあった学級を比較するデータ、(4)教員組織への所属意識と学力の定着度を検討するデータ、(5)学級担任教師の指導行動を検討するためのデータ、である。 今後、これらのデータを分析、検討し、生徒の対人交流・集団活動意欲、学習意欲、進路意識を向上させる学級集団の状態像と、その形成モデルを構築していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、生徒の対人交流・集団活動意欲、学習意欲、進路意識と学級集団の状態との関係を実証的に明らかにし、これらの意欲を向上させる学級集団の状態像と、その形成モデルを提案することであった。平成24年度、25年度における調査において、学級集団の状態と生徒の対人交流・集団活動意欲、学習意欲、進路意識との関係、および、学級集団の状態を規定する要因を、1年の中で4回にわけて調査・分析を行った。その結果、学級集団のいくつかの発達過程とそれを規定する要因を見出すことができた。さらに、この結果に加えて、生徒の対人交流・集団活動意欲、学習意欲、進路意識と学級集団の状態との関係についても検討を行うことができた。また、調査対象校の学級担任教師への聞き取り調査や、各学級での観察を適宜実施した。以上のプロセスを通して、生徒の対人交流・集団活動意欲、学習意欲、進路意識を向上させる学級集団形成の仮説モデルを概ね作成。 さらに、教師の指導行動を測定する尺度を新たに作成するために質的な調査を行った。この結果から明らかになった内容を実証的に検証するために、量的調査を行うための尺度項目を作成してデータを収集し、現在、分析を進めている段階である。合わせて、教師の指導行動に影響を与えると予測される所属校への所属意識について、質的調査と量的調査を行い、データを収集して、入力、整理、分析を行い、新たに、教員組織への所属意識を測定する尺度を新たに作成した。 これらの理由より、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、平成24年度、25年度で蓄積したデータを整理・分析し、生徒の対人交流・集団活動意欲、学習意欲、進路意識を向上させる学級集団形成の仮説モデルの妥当性について検討を行う予定である。具体的には、調査対象学級の、学級集団の状態を規定する要因としての、生徒相互の対人関係の状況、小グループの実態、学級内に定着している規範やソーシャル・スキルの内容、教師の行った指導行動、教職員の所属意識、との関連について検討を行う予定である。このことを、縦断データを用いて検討することで、生徒の対人交流・集団活動意欲、学習意欲、進路意識を向上、もしくは、低下させる学級集団の状態について明確に示すことができると考える。合わせて、学級集団が成熟するプロセス、退行するプロセスについても明らかにすることができると考えている。 見出された知見については、本研究テーマにそってまとめと考察を行い、その成果を、研究内容と関連する学会等(日本教育心理学会、日本カウンセリング学会、日本教育カウンセリング学会、日本学級経営心理学会)で論文・ポスター発表するとともに、シンポジウムを主催し、他の研究者および学校現場の教師に意見を求めることも行う予定である。 これらのことを明らかにすることにより、教師が学級経営を展開する際の指針ついて提案することができ、この提案は学級集団内で起こる諸々の問題の予防や、生徒の対人交流・集団活動意欲、学習意欲、進路意識の向上に寄与する学級集団育成につながると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では、当初、岩手、三重などの遠方の地区での調査研究および面接調査等を計画していた。しかし、面接調査については近隣の東京都内の調査対象校のみで必要な学級数を網羅することができたため、遠方地区での面接調査は行わなかった。そのため、旅費の支出が削減された。 一方で、調査対象校が増え有料の調査用紙代が当初の予算を上回ったため、その他の支出が増加したが、平成25年度の実支出額以内に収まる範囲であったため、次年度使用額が生じた。 平成24年度、平成25年度において蓄積されたデータが多数あり、さらに、調査対象校が増加した。そのため、当初の計画よりもデータ整理や分析の処理に時間がかかることが予想される。そのため、これらの作業に携わる人員を増員する必要がある。そこで、次年度使用額については、人件費として使用する計画である。
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