本研究は、3年間の研究期間にわたり、中学生を対象に、自己概念の内容や評価に関する質問紙調査およびインタビュー調査を横断的・縦断的に実施することを通じて、青年期前期の自己概念の発達的変化を明らかにすることを目的としている。質問紙調査は、①自分がどの程度好きか(4段階)をたずね、好きなところ・嫌いなところについて具体的に自由記述、②特性語リスト評定(外向性、協調性、勤勉性の肯定・否定各4項目の合計24項目)、③本当の自分、偽の自分に関する意識、④児童用コンピテンス測定尺度という項目を含む。第1回質問紙調査(平成25年3月)は、4校の中学生約600名を対象に、第2回質問紙調査(平成26年2~3月)は、継続対象校1校と新規対象校1校の中学生約400名を対象に、第3回質問紙調査(新規対象1年生のみ平成26年6月、その他平成27年1月~3月)は、継続対象校2校の中学生約400名を対象に実施した。インタビュー調査は、質問紙調査回答者のうちの中学1年生55名を対象として、各年度の3月に3年間に渡り縦断的に行った。インタビューでは、好きなところ、いいところ、1年前からの変化、本当・偽の自分に関する意識などについて詳細にたずねた。 アンケート調査の結果からは、発達にともない自己を否定的に捉えるという傾向は、1年生の6月と1月を比較するとみられたものの、その他の縦断的な比較においては、あまり明確には見られなかった。また本当の自分やにせの自分を意識したことがある人は、ない人よりもコンピテンス得点が低いという結果が明らかになった。インタビュー調査では、回答内容を分析したところ、1年時は能力に関する言及が多く、2年時以降では能力と協調的行動の言及が多かった。また各学年時で外向性への言及の割合が非常に高かった。縦断的な比較結果を踏まえ、今後は文化的特徴を含めた考察の必要性が示唆された。
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