研究課題/領域番号 |
24530846
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研究機関 | 東北文教大学短期大学部 |
研究代表者 |
松田 浩平 東北文教大学短期大学部, その他部局等, 教授 (30199799)
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研究分担者 |
佐藤 恵美 東京富士大学, 経営学部, 准教授 (20569975)
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キーワード | パーソナリティー / 反応時間 / 生理指標 |
研究概要 |
特性語に対する反応時間とパーソナリティ特性との関連性を検討するために、実験で使用するパーソナリティ特性語を精査した。平成24年度の実験では、主要5因子性格検査から抽出した20語を抽出し、実際に実験刺激として用いた。この結果、この20語に対する反応時間の平均値と標準偏差、変動率に関するデータが得られた。この中で個人内に一定の傾向があることが示唆されたが、実験場面に固有のストレスや生理的な特性差による反応時間の変動が予想された。 さらに、平成25年度は、従来までの実験に加えて、新たなセッションとして、文章性格評定試行を検討した。これは、「あなたは~ですか?」という文章の「~」の部分に抽出した20語を当てはめた文章評定試行である。この評定は質問紙で行う性格評定とほぼ同じ形態であり、この反応時間と特性語のみで評定した反応時間を比較することによって、質問紙での評定と特性語のみでの評定を反応時間の平均値や変動率といった量的指標で比較することが可能である。この実験の結果、文章性格評定試行の反応時間は主要5因子性格検査と相関はほとんどなく、文章を読んで判断するまでの時間とパーソナリティ特性には関連性がなかった。ここまでの成果は研究分担者とともに所属機関の個人研究費を使用してThe 13th European Congress of Psychology(Stockholm, Sweden)に発表した。 しかしながら、文章性格評定試行の反応時間には反応時間の変動率に個人に特有な個人内で一定の傾向があり、これを解析することでパーソナリティ特性を示す量的変数やモデルを見いだすことが期待できる。 反応時間など行動指標によるパーソナリティ特性の測定に関する研究は日本国内では少なく、ヨーロッパを中心に研究が進められている。これまでの成果を評価し、検討するためには最新の研究情報の入手が不可欠となると考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度は分担研究者の所属機関において実験室として利用する予定であった研究分担者の研究室が緊急を要する予定外の耐震工事のため半年以上にわたり実験を実施できる状況になかった。そのため実施する期間が確保できなくなり、生理指標を用いた実験協力者を募ることができなかった。その主な理由は、研究代表者が男性であるため生理指標のセンサを協力者の身体に装着する行為には制限があるため、女性である分担研究者による実験の実施が必要不可欠であった。そのため、平成26年度は平成25年度後半に予定していた生理指標を含む実験を平成26年度前半に延期せざるを得なかった。 また実験結果を評価するためには、ヨーロッパを中心に行われている反応時間などの行動指標によるパーソナリティ特性測定の最新の研究成果に触れる必要があると考えた。そのため平成25年度に行った実験結果について第28回国際応用心理学会(ICAP2014 Paris)でこれまでの実験結果を発表して、その討論を踏まえたデータを解釈によってAMOS等を使いモデル構築をする必要性を認めた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究で、特性語のみでの評定と文章での性格評定に関する反応時間のデータが得られた。そこで、パーソナリティ評定時の身体的変化とパーソナリティ特性を量的変数で把握するために反応時間だけでなく、脳波、心拍数、赤外線センサによる前頭血流などの生理指標を加えて検討することとした。また、これによって実験前後に実施する質問紙なども異なる視点も加えて検討することとした。これにより、パーソナリティ特性を量的に検討できる変数が増やすことが可能となる。 そこで、今後の研究として、パーソナリティ評定に反応時間だけでなく、バイタルモニタ(T7500M)を使用して脳波、心拍数、赤外線センサによる前頭血流など身体的変化を生理指標で測定できる機器を加えて、パーソナリティ特性を示す量的変数を検討することにした。平成25年度は、刺激提示と反応時間測定のためのE-Primeと連動させるためTM7500Mの制御プログラムに対応したデータ記録のためのコンピュータプログラムを作成したが生理指標を含む実験は平成26年度前半に行うこととした。 平成24年度の実験前後に実施した質問紙は、現在の身体的状態を把握するPOMS、個人のパーソナリティ特性を把握する主要5因子性格検査であった。今年度の実験はより精密な身体的変数を測定するため次の物品を平成25年度に次の機器を購入し動作の確認と調整を行った。反応時間だけではないパーソナリティ特性の変数を検討する。唾液アミラーゼモニター(NIPRO CM-21)は、質問紙よりも妥当性の高いトレス測定に使用する。AMOSを使用して、共分散構造分析により、反応時間、脳波、心拍数、質問紙などさまざまな指標をパーソナリティ変数として説明できるモデルの作成が検討する。ここまでの成果を第28回国際応用心理学会(ICAP2014 Paris)にて発表して、主にヨーロッパの研究者と討論する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の実験は生理的変数を含めより精密な測定するため、反応時間だけではないパーソナリティ特性の変数を検討する。主要5因子モデルに拡大した特性語に対する反応時間を解釈するために、ヨーロッパを中心に展開される行動指標によるパーソナリティー研究との比較検討が必要となった。 研究分担者が行った実験の協力者には九州・沖縄、関西方面の出身者も一定数含まれていた。大学1年生で上京しているため該当地区の出身者と見なすことができた。このため九州地区と関西地区でのデータ収集を省略することができた。 そのため平成25年度に予定していた、九州地区と関西地区でのデータ収集は生理指標を含めて平成26年度に関西地区で実施することとした。またこれまでのデータを解釈するために第28回国際応用心理学会(ICAP2014 Paris)での研究発表と討論の結果を踏まえてデータ解析と研究報告書の執筆を行うことが必要と考えた。 実験に必要な機器は購入済みであるが、上記の研究計画を実施するためには、当初予定した翻訳校閲費および製本費、データ整理費用と国内旅費のほかに下記似ような追加の支出が必要となる。金額は当初の見積もりであり概算額で示す。 平成26年度は研究報告書作成と追加の心理検査等のため計560千円の支出を予定している。海外旅費として研究代表者と研究分担者の2名がICAP2014 Paris出張のため340×2名の計680千円が必要となり、国内旅費と併せて旅費は計740千円の支出を予定している。さらに平成25年度中に実施予定だった追加実験を平成26年度前半に実施するため、実験協力者などへの謝金として40千円を予定している。ほかに実験機器は精密機器であるため別途輸送費が必要となり、これにデータ整理費や打ち合わせのための費用を加えてその他100千円の支出を必要としている。
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