研究課題/領域番号 |
24530848
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
間宮 正幸 北海道大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (70312329)
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研究分担者 |
村澤 和多里 札幌学院大学, 人文学部, 准教授 (80383090)
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キーワード | 国際研究者交流 / 韓国 / 新しい若者自立支援の形 / 児童自立支援施設退所後の支援 / 障害者総合支援法 / 地域支援における専門職 / ひきこもりを脱すること / 虐待被害者の自立支援 |
研究概要 |
平成25年度の第1の成果は、若者(青少年)自立支援という場合にはなはだしく困難を有する虐待の被害児童の自立支援にかかる調査に着手したことである。本年度は、韓国の児童虐待対応実践について調査した。韓国では、新しい法律のもとに児童虐待対応専門機関が活動している。全48箇所の機関のうち国立が2箇所、残る46機関は民間団体〔緑の傘 Green Umbrella〕がそれを担っている。2013年2月の訪問調査に続いて、2013年7月、北海道大学において、韓国光州広域市児童虐待対応専門機関チーム長のジョン・ヒョンチェル氏を招聘してヒアリングを行った。韓国の児童虐待対応の特徴のひとつに「家庭訪問」機能のレベルの高さがある。さらに、2014年3月に、同市の〔ひまわり児童センター〕副所長のイム・スージン氏をお招きし北海道大学において、韓国の性暴力性虐待被害対応についてヒアリングを行った。韓国の性虐待へのワンストップ型対応は世界の注目を浴びている。本調査・交流の舞台になっている光州広域市の諸活動は、「地域密着連携重視型」という点において本研究の目的に合致している。それぞれ、北海道の専門職各位に講演を聞いていただく機会を設けた。本年度の研究をふくめたこれまでの韓国の実態調査を、日本児童青年精神医学会第54回大会の「地域連携」部門で発表した。 第2の成果は、虐待被害児童の問題にもかかわる児童自立支援施設におけるアフターケアの実態調査を行ったことである。北海道内2箇所の施設出身者とかつて彼らの指導担当者であった施設指導員からの聞き取り調査を行った。そして、求められる自立支援の実際を探求した。 第3の成果は、新しい若者自立の地域支援の実践を探っている実践家の意識調査を行ったことである。彼らの内面の精神的葛藤や教育思想について探求した。 ひきこもりを脱した若者への面接法による研究も継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
わが国の若者自立支援における地域密着連携支援の実際と理論的方法を探求することがわれわれの課題である。その場合、実践主体が抱えるさまざまな苦悩や現実の困難を抽象化してしまうのではなく、その実際に寄り添うかたちでの調査研究が必要と考え、本年度は、その点に着目して実践家自身の自己教育と成長という観点からの接近を目指した。調査協力者と研究協力者の全面的協力を得て、共同研究が進んだと考える。 特に、韓国の青少年自立支援の実践家との研究交流は北海道大学在籍研究者との横のつながりを得てさらに充実してきていると考える。韓国では、21世紀に入って次々と法的整備を行い、むしろ、急激な制度変換が起きているために個々の実践家の自己教育と成長の保障が課題と考えられ、この面においても研修制度の整備が進められている。わが国の若者自立支援にかかる法的財政的整備の状況が厳しいだけに、韓国から学ぶべき点は多く、これをあきらかにしつつある本研究は今後重要性を増すことであろう。 次に、われわれには、科学研究費補助金を得てこれまで行ってきた臨床的研究がある。すなわち、ひきこもりから脱して自立の道を模索する若者の臨床心理学的な研究も蓄積されてきている。若者自立支援施設で働く実践家が極端な多忙のなかで研究を行う余裕を与えられていない現状があるなかでは、その状況を打破することにささやかながら貢献しているのではなかろうか。 本研究の主題は「若者自立支援にかかる地域援助体制の再編成に関する研究」というものであり、支援体制の制度整備はもちろん必要である。しかし、人材の養成・教育という面が求められていることもあきらかになってきた。これを強調していることもわれわれの研究の成果であろう。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、本研究の最終年度であるので以下の3課題を中心にすえたい。 1.欧米の若者自立支援における地域援助の実際と韓国のそれとわが国の場合の比較研究を行うこと。 2.地域援助体制という場合に、資格所有専門職の「専門性」を地域援助の実際に即して再考、再編成すること。 3. 若者自立支援の担い手が依拠することができるわが国独自の臨床心理学的地域援助の理論構築を行うこと。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度にシンポジウムを開催し、韓国から講師を招聘した。その際、旅費を支給したが、そのための海外送金手数料の処理が平成26年度4月になってしまったため。 未使用額は前年度に生じた海外送金手数料の4月支払いにあてる。
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