研究概要 |
平成24年度は2つの研究を行った。まず,既存のWebカウンセリングを行っている団体や個人をGoogleで検索し,情報のデータベースを構築した。その後,実際の運営の課題に関して団体や個人に直接インタビュー調査を行い,遠隔臨床心理支援をする際の課題を明確にした。 つぎに,被災地等で活躍している臨床心理士資格取得準備中の3名を対象にスーパーヴィジョン(以下,SVと略す)を行った。SVは対面,Eメール,スカイプの3方式を採用し,3つのコミュニケーションメディア(以下,CMと略す)の心理的効果を比較検討した。質問項目は,SV事前評価尺度として,事例困難度(10件法),感情気分評定20(福島・高橋・松本・上田・中村,2005)を使用した。SV事後評価尺度として,事例困難度(10件法),感情気分評定20(6件法),SVの効果の指標として,SVの時期の適切度(5件法)など10項目を設定。地理的負担度,経済的負担度,心理的負担度は10件法で,良くなかった点,良かった点および改善点は自由記述形式で設定した。 結果に関しては,SV前後評定項目として感情気分評定20から肯定的感情と否定的感情に該当する10項目の各平均と困難度を用いて,3(対面・電子メール・スカイプ)×2(事前・事後)の分散分析を行った。その結果,測定時点の主効果が3つの従属変数すべてにおいて認められた。つまり,SVによる感情と認知への肯定的効果が認められた。しかし,CMの主効果や交互作用は認められなかった。負担度に関しては,対面方式は電子メールやスカイプに比べて地理的・経済的負担が大きかったが,心理的負担では有意な差が認められなかった。今後は,データを増やすことにより,SVにおけるCMの相違をより明確にしていく予定である。
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