研究課題/領域番号 |
24530852
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研究機関 | 九州保健福祉大学 |
研究代表者 |
藤田 英樹 九州保健福祉大学, その他部局等, 研究員 (50450606)
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キーワード | 発達障害 / 高等教育 / 修学支援 / 成人期 / 生活支援 / 相談支援 / 認知機能 / 精神機能 |
研究概要 |
1.学習支援と生活支援 高等教育の発達障害学生支援では、発達障害の診断がなく支援を受けている学生が、診断があり支援を受けている学生の2倍の数になることが示されている。このことは、高等教育において新規の支援ニーズが生じていることを示している。その支援ニーズは高等学校までの学校教育の環境で保護され、顕在化しなかった。高等教育の学生生活とは、学校生活というよりも、むしろ成人期の社会生活に近い。高等教育で生じた新規の支援ニーズとは、社会生活のためのスキル、すなわち対人関係や自己管理である。学業と社会生活では、適応のためのスキルが異なるといえる。そのため、高等教育の発達障害学生のキャリア支援において、成人期の社会生活を視野に入れた取り組みを行うと同時に、高等学校までの学校教育においても、高等教育で顕在化する支援ニーズについて取り組むことも求められる。 2.相談支援の2つの側面 発達障害とは一次的には認知特性の偏りであるが、思春期・青年期には不安、抑うつ、パーソナリティ障害などの精神障害が二次的に進展し、成人期の発達障害ではむしろ精神障害の方が先に見出されることが多い。この二次的精神障害に対して、発達障害の相談支援は、いわば「専門性の谷間」であったといえる。すなわち、カウンセリングの専門家は、発達障害は自分たちの専門ではないと思い、発達障害の専門家は、カウンセリングは自分たちの専門ではないと思い、どちらの専門家からも取り組まれることが少なかった。この発達障害の相談支援には、2つの側面がある。1つは、不安や抑うつなど精神障害に対する治療であり、例えば認知行動療法が挙げられる。もう1つは、社会生活のための社会的判断や意思決定に対する支援であり、これは生活支援に関するものである。つまり、発達障害の相談支援には、精神療法の側面と生活支援の側面があり、この2つを使い分けることが求められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.高等教育における発達障害支援について、高等学校までとは支援方法が異なり、成人期を視野に入れた支援が求められること、すなわち、学習支援と生活支援では質的に異なり、従来の学習支援を中心とした支援方法ではカバーしきれない支援ニーズがあることを明らかにすることができたため。 2.発達障害では認知機能の偏りだけが問題ではなく、二次的な精神障害も併存する。発達障害の相談支援は、実際のニーズがありながら、いわば「専門性の谷間」であり、どの専門家からも自分の専門ではないとして、取り組まれることが少なかったこと、発達障害の相談支援には精神療法と生活支援の2つの側面があり、それらを使い分けることが求められることを明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
1.社会的判断と意思決定 学業と社会生活の相違の1つに、社会生活では社会的判断と意思決定が求められることが挙げられる。社会的判断としては、心の理論や道徳性(モラル)などがあり、これらは社会適応を左右するソーシャルサポートに関わっている。一方、意思決定とは、自己管理などの自律的な生活の基盤になる。どちらも高等教育を含めた成人期発達障害の生活支援において重要な役割を果たしている。そこで、次年度は発達障害の社会的判断や意思決定の支援技法を開発することを目標とする。 2.成人期発達障害と他の精神障害との判別方法 発達障害とは一次的には認知特性の偏りであるが、思春期・青年期に二次的精神障害が進展し、高等教育を含めた成人期では、発達障害よりもむしろ精神障害の方が先に見出されることが多い。中には、発達障害に気づかれないまま、精神障害としての支援を受けている場合も多い。二次的精神障害に隠れている発達障害を発見することが、成人期発達障害の相談支援では重要になる。そこで、次年度は発達障害と他の精神障害の判別方法を開発することを目標とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費が当初の予定より少なかったため。 次年度の消耗品費として使用する。
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