高等教育における発達障害学生支援の対象者は、発達障害の診断のない学生が診断のある学生の2倍の数に及び、支援ニーズが一般学生の中にも連続している。一般学生に連続した支援ニーズとは、進学率が50%を超えてユニバーサル段階にある大学の、多様化した学生のニーズでもある。この連続した支援ニーズを網羅するには、一般学生支援の中に発達障害支援の発想を創発的に取り入れて、新たにユニバーサルな支援を考える必要がある。 発達障害とは認知機能の偏りやバランスの悪さであり、発達障害のユニバーサルな支援とは「理解のユニバーサルデザイン(UD)」になる。理解のUDの基本原理となる考え方は、暗黙の前提や無意識の習慣について「説明を省略しないこと」である。もし説明が省略された場合、一般学生は理解のステップで越えることができるが、発達障害学生はそれを越えることが出来ず、理解のバリアとなる。 理解のUDの具体例には、1)概念図、2)協同学習(アクティブラーニング)、3)批判的思考がある。1)概念図は、抽象的な概念や思考といった、本来は言語によって表現されるものを可視化・具体化し、その理解を補助する。2)協同学習は、学生の視線の高さに基づく学び合いであり、学生が自分たちの理解に合わせて理解のステップを自作して、理解を高めていく。3)日常的な判断や認識である常識は、悉皆的な検証が省略されており、それを人々が共有している。このような自明とされる判断や認識の真偽を検証するのが批判的思考であり、説明を省略しない点では理解のUDと同じ志向性を持つ。 「説明を省略しないこと」を基本原理とする理解のUDが一般学生に与えるメリットには、1)余裕をもって理解できる、2)着実な理解が思考力の土台を固める、3)抽象的な概念や思考の理解を補助する、4)新たな発見が生まれる創造性の土壌となる、5)理解の容易さが学習意欲を高める、などがある。
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