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2013 年度 実施状況報告書

保護観察中の性犯罪者の性的認知の特徴を踏まえた処遇方法の発展

研究課題

研究課題/領域番号 24530854
研究機関千葉大学

研究代表者

羽間 京子  千葉大学, 教育学部, 教授 (60323383)

キーワード性犯罪 / 性的認知 / 保護観察 / 再犯防止
研究概要

本年度の研究結果は、以下の4点にまとめられる。
1.法務省保護観察所長の許可を受け平成24年度に収集した、同所長の保護観察下にある性犯罪者(刑事処分としての保護観察を受けている成人)が処遇過程で回答する性犯罪質問紙のデータ約260件(被害者が大人である者、子どもである者からなる)を、平成25年度に、罪種別、被害者の年齢などによってサブグループに分けて比較した。その結果、性犯罪者群には性的認知のゆがみがあり、性犯罪の罪種による相違があることを見出した。この研究成果の一部を学会発表した。
2.法務省保護観察所長の許可ならびに千葉大学教育学部生命倫理審査委員会による承認を受け、平成24年度において、同保護観察所長の保護観察下にあり、インフォームド・コンセントが得られた財産犯を対象に、性犯罪を含む犯罪一般についての質問紙調査を行い、60件のデータを収集した。平成25年度に、この結果と、上記1の性犯罪者群との比較分析を行った結果、性犯罪者群の性的認知のゆがみの存在と、性犯罪の罪種別の特徴の具体が明らかになった。
3.法務省は、本研究の対象となる性犯罪者には、認知行動療法を基盤とした専門的処遇プログラムを実施している。本研究では、同プログラムをはじめとする保護観察処遇の効果検証のあり方について、理論的検討を行い、論文化した。加えて、性犯罪者の認知的構造や認知的プロセスに関する先行研究を調査し、論文化した。
4.本研究の成果が認められ、法務省保護局から、保護観察の対象となった性犯罪者約6200人について、罪種、静的リスクと動的リスクの調査結果の得点、保護観察開始後3年間の再犯の情報の提供を受けることができた。分析の結果、静的リスク得点と動的リスク得点には、再犯者と非再犯者とで相違しており、罪種による違いもあることを見出し、論文化した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究は、(1)欧米諸国の先行研究において性犯罪の発生や反復の重要な要因とされている性的認知のゆがみが、わが国の性犯罪者においても認められるかを明らかにし、(2)その結果と事例研究を踏まえ、再犯防止のための、より実効性ある保護観察処遇論を展開することを目的とする。当初の研究計画では、平成24年度に保護観察所長の許可を受け、刑事処分としての保護観察を受けている成人の性犯罪者(以下、性犯罪者群)が、保護観察の処遇過程で回答する性犯罪質問紙回答結果を収集し、平成25年度に、性犯罪歴を有しない犯罪者(以下、一般犯罪群)を対象とした性犯罪を含む犯罪一般についての質問紙調査を行い、これらの結果と、我々がすでに有している犯罪歴のない一般成人(以下、対照群)の性犯罪質問紙回答結果を比較分析し、性犯罪者群を罪種別、被害者の年齢などによってサブグループに分けて比較検討をした上で、平成26年度に実務家との事例研究を行うこととした。
研究実施の結果、平成24年度に、性犯罪者群と対照群の比較検討を終了し、性犯罪者群は、対照群に比し、性的認知のゆがみが有意に認められることを明らかにした。平成25年度においては、性犯罪者群を罪種別、被害者の年齢などによってサブグループに分けて比較検討し、性犯罪者群の性的認知のゆがみには罪種による相違があることを見出し、研究成果の一部を学会発表した。加えて、性犯罪者群と一般犯罪者群との比較検討を実施し、一般犯罪者に比べ、性犯罪者群には性的認知のゆがみがあることを明らかにした。また、性犯罪者群の静的リスク得点と動的リスク得点には、再犯者と非再犯者とで相違しており、罪種による違いもあることを見出し、論文化した。平成26年度に実施予定の事例研究のための事例の収集にもすでに着手している。したがって、現在までの達成度は、「①当初の計画以上に進展している。」と言うことができる。

今後の研究の推進方策

1.性犯罪者群の事例の収集と分析を行う。その際、すでに実施した実証研究の結果、すなわち、(1) 性犯罪者群と対象群との質問紙回答結果の比較分析、(2) 性犯罪者を罪種別、被害者の年齢などによってサブグループに分けての比較検討、ならびに、(3) 性犯罪者群と一般犯罪者群との比較分析の結果を踏まえ、性犯罪者の性的認知のゆがみの特性について、事例に即した具体的な考察を進める。
2.本研究のこれまでの成果が法務省保護局に認められ、平成25年度に論文化した保護観察開始後3年間の再犯に関するデータに加え、保護観察開始後4年間のデータ収集が許可された。そこで、性犯罪者群の再犯に関する、より長期のデータについて、解析を行い、罪種による再犯リスクの相違についての分析を推進する。
3.以上1及び2を踏まえ、現職の保護観察官などの犯罪臨床の複数の専門家の参加を得て、性犯罪者に対するより実効性のある保護観察処遇のあり方について論考していく。
4.本年度は、本研究の最終年度に当たることから、研究成果を国内外の学会において発表し、英文化する。

次年度の研究費の使用計画

当初の研究計画よりも円滑にデータ分析ができたため、研究代表者・連携研究者・研究協力者の打ち合わせにかかる費用が計画よりも低く抑えられた。
次年度は、当初計画の通り、研究費を、研究の深化を図るための関連図書購入や研究遂行に必要な消耗品の購入(物品費)、研究資料の整理のための謝金ならび論文化の英文校正代(人件費・謝金)として支出し、研究成果を諸学会において積極的に発表(旅費)、論文発表する予定である。研究成果を発表する学会の開催地が当初計画よりも遠方となったため、旅費の支出が増加する見込みである。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (5件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 保護観察における専門的処遇プログラムの効果測定のあり方2014

    • 著者名/発表者名
      羽間京子,勝田聡
    • 雑誌名

      千葉大学教育学部研究紀要

      巻: 62 ページ: 17-22

  • [雑誌論文] 覚せい剤事犯者の処遇効果に関する研究の現状と課題2014

    • 著者名/発表者名
      勝田聡,羽間京子
    • 雑誌名

      千葉大学教育学部研究紀要

      巻: 62 ページ: 23-29

  • [雑誌論文] 保護観察中の性犯罪者の認知の歪みに関するアセスメント2014

    • 著者名/発表者名
      勝田聡
    • 雑誌名

      千葉大学人文社会科学研究

      巻: 28 ページ: 150-161

  • [雑誌論文] 保護観察所における性犯罪者処遇のあり方について: 再犯リスクの分析を踏まえて2013

    • 著者名/発表者名
      勝田聡,羽間京子
    • 雑誌名

      犯罪と非行

      巻: 176 ページ: 215-227

  • [雑誌論文] 発達障害の理解と保護観察処遇の工夫2013

    • 著者名/発表者名
      羽間京子
    • 雑誌名

      更生保護

      巻: 64(7) ページ: 6-12

  • [学会発表] 保護観察所における性犯罪者処遇プログラムの効果検証と再犯リスク分析2013

    • 著者名/発表者名
      勝田聡
    • 学会等名
      第2回更生保護学会
    • 発表場所
      国士舘大学
    • 年月日
      20131208-20131208
    • 招待講演
  • [学会発表] 非行少年の立ち直り:元保護観察官/心理臨床の立場から2013

    • 著者名/発表者名
      羽間京子
    • 学会等名
      日本犯罪心理学会第51回大会
    • 発表場所
      大阪教育大学
    • 年月日
      20130928-20130928
    • 招待講演
  • [学会発表] 保護観察中の性犯罪者の性的認知のゆがみに関する研究2013

    • 著者名/発表者名
      勝田聡,羽間京子
    • 学会等名
      日本生活指導学会第31回研究大会
    • 発表場所
      和歌山大学
    • 年月日
      20130918-20130918
  • [図書] 保護観察中の覚せい剤事犯者の処遇方策に関する研究2014

    • 著者名/発表者名
      羽間京子
    • 総ページ数
      50
    • 出版者
      千葉大学人文社会科学研究科

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公開日: 2015-05-28  

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