本研究の目的は、重度・重複障害児を対象とした「人間関係の形成」を目指した支援プログラムの開発であった。このプログラムは、「人間関係の形成」の主たる要素である社会性の初期発達を中心領域とする。また重度・重複障害児にとって重要な生活の場である特別支援学校と家庭のふたつの場において、教師と保護者によって協同的かつ包括的に実施されるところに特徴がある。具体的には、動作法よる身体運動的相互交渉を活用した三項関係の形成と身体遊びを介した模倣・逆模倣関係の形成といった社会的認知を育む発達支援の方法について開発・検討を行った。 実際のプログラムとしては、重度重複障害児への大人からの模倣を活用した指導の成果を検討した。その結果、大人からの模倣が、他者への注視やポジティブな情動を引き出すことが明らかになった。 学校教育(教師)への還元としては、この研究機関に10校を超える学校に対して指導助言、研究や研修への協力、実践の提示として成果を還元した。また教育センターでの研修にも生かすこととなった。 保護者との協働については、保護者が重度・重複障害児に抱く「人間関係の形成」を含む療育のニーズについて、年代をおって調査した。その結果、身体の動きや健康の保持は、幼少期にニーズが高く、その後人間関係の形成や社会生活体験といったニーズが高まってくることを明らかにした。また心理リハビリテイション(動作法)を実施している保護者の家庭での実施状況を調査し、家庭療育をサポートすることの必要性と、そこで求められる専門家の役割について検討した。具体的には、親子関係のなかで実施できる狙いや課題の提案が求められていた。
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