研究課題/領域番号 |
24530863
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
河野 荘子 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (00313924)
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研究分担者 |
岡本 英生 奈良女子大学, 人間科学部, 准教授 (30508669)
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キーワード | 非行・犯罪者 / 抑うつに耐える力 / 反応の柔軟性 |
研究概要 |
平成22年度版犯罪白書には、再非行にいたる少年の割合が年々増加していることが報告されている。犯罪を繰り返す者は、幼い時から逸脱を開始する。非行の発生や再発を防止する有効な手立てを考えることは緊急の課題であり、一般社会からの強い要請でもある。 本研究は、その要請に応えるべく、「抑うつに耐える力(河野,2006,2003)」と「反応の柔軟性」をキーワードに、少年が非行から離脱していく心理的プロセスにおいて、どのような心理的要因が離脱へと導くカギとなるのか、その要因はどのように強化され、その 過程において、少年の心の中ではどのような変化が起きているのかを検討しようとするものである。 平成25年度は、非行少年とほぼ同年代の一般大学生に質問紙を実施し、非行少年のデータとの比較をおこなった。調査協力者は、大学生91名(平均年齢19.4歳)である。その結果、大学生は、他者からの援助を、自らの抱える不安に向き合う原動力であり、孤独を和らげるものと認識していること、他者からの援助を得るためには、自己開示する必要があると考えていることなどが明らかになった。また、情動焦点型コーピングを使用する目的が、非行少年は自らの寂しさや不安への対処なのに対し、大学生は不安に向き合う強さを得るためと考えており、この2群間での相違が、それぞれの群の何らかの特徴を示すものと推測された。 以上を、平成25年日本犯罪心理学会で成果として発表した。現在は、平成24年の非行少年のデータと比較する形で論文執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書に記載した時点では、25年度は、非行少年の心理的変化を面接調査で検討する予定であった。しかしながら、やはりプライバシーの問題があり、継続的で直接的な調査に協力してくれる人を確保することができないでいる。この点は、引き続きの検討課題としたい。 しかしながら一方で、非行少年の抑うつに耐える力と、同世代の青年たちとを比較することは、非行少年を理解し、具体的な援助方法を考える上で、非常に意義深い。その意味で、本年も一定の成果を上げたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
個別の継続的な面接に協力してくれる人を探し続けることと同時に、非行少年に対する継続的な面接が難しい可能性も視野に入れ、調査対象をより広げることも考えなければならない。非行少年よりも、犯罪性や反社会性が進んだ犯罪者の離脱過程についても検討したい。今後、犯罪者を対象としたデータを収集し、平成24年、25年の成果をもとに、非行少年・犯罪者・一般青年の比較を行うことを検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初、平成25年度は、個別の継続的な面接を予定しており、それに関わる謝金やデータ管理・データ分析などに予算を計上していた。しかしながら、調査協力者の確保が難しく、実際は実施できなかった。そのため、当初予定していたよりも、謝金や人件費などがかからず、当該研究費が生じたと考える。 平成26年度は、昨年度と同様の成果発表や研究打ち合わせなどにかかる旅費に加え、海外での成果発表も考えており、その他消耗品なども必要である。犯罪者のデータを継続して収集することを考えており、その分のデータの管理・分析作業を加味すると、当初考えていたよりも予算がかかりそうである。平成25年度からの繰越金は、そちらに充てたいと考えている。
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