臨床心理アセスメントにおける分析解釈プロセスを明らかにするため、特にロールシャッハ法を用いたアセスメントをとりあげ、臨床家がロールシャッハ反応記録データのどこに着目して対象者の人物理解を行っているのかを検討した。 具体的には臨床心理士を対象として、一事例のロールシャッハ記録を提示し、どこに着目しどのように考えるか自由記述してもらう調査を実施した。臨床心理士数名との共同研究の形で、結果の一部については平成26年度27年度と日本ロールシャッハ学会にて成果発表を行ってきた。そこでは臨床実践におけるロールシャッハ法の経験により着目点の違いが生じるかどうか、また図版による違いが見られるかどうかを探索的にとらえることを目的としていた。その結果、臨床経験に関わらず共通した着目点は多いものの、羅列的な着目から複数の着目点を相互関連的にとらえることへの変化が見られることが明らかとなった。概要については、日本ロールシャッハ学会第20回大会における会長講演の中で紹介した。 臨床経験により何が発達していくのかを知ることは養成教育にも役立つ視点を得ることにもなるため、平成28年度は検討対象データを増やし、着目点の多様性があるかどうか、着目点とその意味づけ(解釈)を関連付けてみているかどうか、という観点を加えて、10枚のロールシャッハ図版ごとに先ず集計し、次に臨床経験年数による群分けをして分析を行った。結果は次年度の日本ロールシャッハ学会で発表を予定している。 大学院及び学部における心理アセスメント授業で用いる教材「ロールシャッハ法から学ぶ人間理解」を作成した。
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