1.主として近畿圏内(京都・大阪・神戸)にあるろう学校(聴覚支援学校)を複数校訪問し、早期教育相談・幼稚部を観察し、担当者から、人工内耳装用に関する動向や教育指導方針(手話導入に関する流れ)について聴き取り調査を実施した。また、同圏内の小学校に設置された「ことばの教室」を複数訪問し、難聴児童への支援と現状について詳しい聴き取り調査を行なった。 2.京都市内にある聴覚障害者福祉施設において、社会生活において何らかの問題を抱える難聴成人らを対象に実施されている「厚生支援訓練」プログラムの一貫として、心理グループワークを継続的に実施した。生育過程における体験や成人後の生活における体験について話し合いを重ねながら詳細に聴き取り、個別面接も含めながら、難聴者の抱えやすい心理発達的困難や課題について情報を得た。グループワークの経過を詳細に記録し、その分析をとおして、難聴者に対する臨床心理学的支援のあり方について考察した。また、その内容を難聴乳幼児・児童の養育・教育に生かし、家族支援に結びつける手立てについて検討してきた。 3.対人関係に困難を抱える人工内耳装用児(学童期)複数に対する統合的な支援(個別プレイセラピイ・家族訪問支援・母親面接・学校との連携等)を継続的に実施し、その経過を詳細に記録し、定期的な関係者会議で考察・分析・方針づくりを重ねてきた。 4.難聴児に対する教育と福祉政策について、アメリカ、北欧、イギリスを視察訪問した研究者(心理学・社会福祉学専門)を講師に招いて学習会を行ない、人工内耳手術に関する近年の動向と、それが教育方針の変更にもたらす影響について情報を得た。
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