研究課題/領域番号 |
24530869
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
中村 菜々子 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (80350437)
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研究分担者 |
井澤 修平 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, その他部局等, 研究員 (00409757)
山田 クリス孝介 佐賀大学, 医学部, 助教 (70510741)
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キーワード | ストレス / 労働者 / ストレス・マネジメント / パネル調査 / 認知行動療法 / 予防 |
研究概要 |
研究全体では,労働者のストレスに対するセルフケア実施を阻害・促進する認知的要因の影響を検証することを目的とする。研究1・2では,労働者のセルフケア実施に対する態度を明らかにし,否定的・肯定的な態度がセルフケア実施や精神的健康に与える影響を,横断的(研究1),縦断的(研究2)に検討する。次に研究3として,研究成果に基づき,労働者のストレスに対するセルフケア実施への態度を変容する介入方法を検討する計画である。 このうち平成25年度は,研究2を実施した。平成25年11月に,調査会社に登録している,就業構造基本調査の産業分類(農林漁鉱業を除く)に対応させた労働者3236名を対象に(平成24年度横断調査に参加した4609名中70.2%),ウェブベースの調査を実施した。 調査内容は,1)セルフケアを阻害する認知的要因(井澤他,2013),2)セルフケアを促進する認知的要因,メンタルヘルスの知識(Nakane et al, 2005),4)コーピング特性簡易尺度(景山他,2004),5)職業性ストレス簡易調査票(下光他,2001),6)ストレスのセルフケア行動の実行頻度(Nakamura, 2009),7)K6(Furukawa et al, 2008)などで構成した。得られたデータについて分散分析,および重回帰分析を実施し,縦断的な分析を実施した。 結果のうち,うつ病の典型症状を描写した短文に対する,原因と予後の評定(メンタルヘルスの知識)について,ストレスを過小評価する態度(セルフケアを阻害する認知的要因)の影響が認められ,ストレスを過小評価する態度が強いほど,うつ病であると評定せず,また,予後についてもより楽観的に評価していた。状況評価に対する認知的要因への介入可能性の検討が今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,分析可能な対象者数は2000名程度であると見込んでいたが,縦断調査実施の結果,3236名の協力を得ることができた。 したがって,計画は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究3を実施する。 研究1および2の分析結果より,うつ病の典型症状を描写した短文に対する,原因と予後の評定(メンタルヘルスの知識)について,ストレスを過小評価する態度(セルフケアを阻害する認知的要因)の影響が認められ,ストレスを過小評価する態度が強いほど,うつ病であると評定せず,また,予後についてもより楽観的に評価していた。したがって状況評価に対する認知的要因への介入可能性の検討が今後の課題であると考えられた。 今後は,研究3として,ストレスを過小評価する態度が高い者と低い者とを比較し,ストレスによる悪影響に関する情報提供や有効なストレス対処法に対する情報提供をどのように評価するのか,そうした情報提供によって態度や行動を変容しうるのかについて,実験または介入による研究を行っていく計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在までの研究から,ストレスの存在を過小評価する信念が高い者が,実際のストレス状況をどのように評価し,ストレス緩和に役立つ行動を行うのか,実験または介入研究を行う必要があると考えられた。この際,予算に応じて対象者数や謝礼額が変わってくると予想された。そこで,平成25年度の予算の一部を平成26年度も使用できるよう,打ち合わせの一部をウェブ会議に切り替えて旅費を使用しない,バージョンアップ予定だった統計ソフトをバージョンアップせず使用するなど工夫して,平成25年度の予算配分を変更し,平成26年度の研究で使用できる予算にできるだけ可能性を持たせるよう工夫した。 次年度研究費の多くを占めると予測されるのは,ストレスの存在を過小評価する信念が高い者が,実際のストレス状況をどのように評価し,ストレス緩和に役立つ行動を行うのか,そして,これらの対象者にとって,彼らの信念にもっとも影響を与えうる情報提供内容と方法は何か,という点を明らかにする実験または介入研究である。この際に必要な実験機材と協力者への謝礼が,主な予算使用計画である。
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