研究課題
研究全体では、労働者のストレスに対するセルフケアを阻害・促進する認知的要因の影響を検証することを目的とした研究を行ってきた。研究1・2では、労働者のセルフケア実施に対する態度を明らかにし、否定的・肯定的な態度がセルフケア実施や精神的健康に与える影響を、横断的(研究1)・縦断的(研究2)に検討した。横断的には(研究1)、ストレスに対するセルフケアの実施について、その重要性を過小評価する傾向(SUB: Stress Underestimation Belief)が強いほど、うつ病に対する知識が低く、ストレス状況を楽観的に評価し、効果的なサポートを選択しなかった。これらの傾向は、女性よりも男性で顕著だった。また1年間の追跡調査では(研究2)、SUBが高い男性は、1年後の抑うつ症状発生率と抗うつ剤の使用率が対照群(SUB中群)よりも有意に多かった。研究1および2の成果を踏まえ、研究3では、労働者のストレスに対するセルフケア実施への態度を変容する介入方法を実験により検討した。一連の調査研究から高SUB者の「ストレス管理をしなくても、問題は起きない」という楽観的な認知(過度に低リスクな認知)をターゲットとし、「ストレス管理をしないと、この先問題に問題が起きるかもしれない」という認知(適度にリスクを感じる認知)に変容する必要が考えられた。リスク認知に関する先行研究とストレス教育に関する先行研究を参考にして、ストレスやメンタルヘルスに関する説明文章を7つ準備した。これらを、男性労働者400名(20代・30代・40代・50代各100名)が、「文章の内容に興味を持った」等5側面から評価した。高SUB者は文章1(うつ病による休職後の職場復帰への影響)について、最も興味を持つと評価した。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件)
International Journal of Behavioral Medicine
巻: in press ページ: in press
10.1007/s12529-016-9557-8
行動医学研究
巻: 21 ページ: 69-75