研究課題/領域番号 |
24530873
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
山下 光 愛媛大学, 教育学部, 教授 (10304073)
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キーワード | 心理学 / 臨床心理学 / 神経心理学 / アセスメント / 練習効果 / 詐病 / 利き手 / 注意 |
研究概要 |
(1)質問紙によって自己評価した左右弁別困難と,実際の左右弁別能力の関係を検討するため,86名(女性44名,男性42名)の大学生に左右弁別質問紙と,Money Road-Map Test (MRMT)を実施した。参加者を質問紙の得点で高弁別困難群と低弁別困難群に分け,MRTTの成績を比較したところ,有意差が認められた。質問紙では女性の方が男性よりも左右弁別の困難度を高く評価したが,MRMTの成績には男女差は認められなかった。この研究成果はpsychological reserach誌に掲載された。 (2)健康な日本の成人が受動的ななぞり読み(閉眼状態で他者が手を取って文字をなぞらせる)によって,平仮名や漢字を同定(音読)する能力を56名の大学生を対象に検討した。参加者は左手使用群と右手使用群に分けられ,それぞれ44個の平仮名,漢字(小学校1年生で履修するもの)を受動的ななぞりによって提示された。その結果,使用した手(左右)には関係なく,約80%の平仮名と50%の漢字を同定することができた。この結果をもとに,日本語の読み書き関与する脳のメカニズムについて考察した。また,この手続きが脳損傷による読み書き障害のリハビリテーションに応用できる可能性を示した。この研究成果はPsychology誌に掲載された。 (3)高次脳機能障害の注意障害の評価に多用されている標準注意検査(CAT)において,意図的に高次脳機能を装おうとした場合の虚偽反応の特徴を大学生を対象に検討した。高次脳機能障害の知識を持たない大学生は多くの下位検査で対照群よりも低い成績を示したが,明確な虚偽反応と判断できるような特徴的な反応パターンは認められなかった。この研究成果は第37回日本高次脳機能障害学会学術総会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初,注意のコントロールに関する実験のために市販の振動刺激装置を導入する予定であったが,スペックに問題があり購入を断念した。現在はその代替として携帯電話用の振動子を使用した自作装置での基礎実験を行っている。また,研究成果の一部を国際神経心理学会(INS)の年次総会で報告する予定であったが,校務日程と重なり断念した。同学会発表予定だった研究成果については,論文として国際雑誌に投稿した。それ以外の研究についてはほぼ予定通りに進行しており,研究成果の国際誌への投稿,掲載も順調である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は研究の最終年度にあたるため,研究成果のまとめと報告を中心に活動する。特に国際誌への論文掲載に力を入れる。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度はオランダで開催された国際神経心理学会(INS)の年次総会に参加し,発表を行う予定であったが,日程が校務と重なったため,参加を断念した。発表予定であった演題については国際誌への投稿に切り替えた。また,実験の制御,統計解析に使用していたPCとソフトウェアが,MS-WindowsXPベースのものであったため,サポートの終了に伴い更新する必要が生じたため,物品費の一部をそれに充てた。 本年度は研究の最終年であるので,国際雑誌への論文掲載(英文の校閲を含む),学会発表を中心に予算を使用する予定である。
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