本年度は、昨年度に実施した小学4年生を対象とした抑うつ予防プログラムの介入直後と1年後のフォローアップ査定における介入効果を検討した。主な結果は次の通りであった。 (1)抑うつ得点は、介入前から介入後にかけて、有意に減少し、1年後のフォローアップ時点では介入後よりもさらに減少していることがわかった。このことから、本プログラ ムの抑うつ低減効果が確認され、さらに1年にわたる長期的維持効果も見いだされた。(2)社会的スキルは「上手な断り方」スキルにおいて、介入前から介入後にかけて有意な得点の増加が認められたが、フォローアップ時点では、介入効果が見いだされなかっ た。(3)認知の誤りについては、介入前から介入後にかけて有意な得点の減少がみられ、1年後のフォローアップ査定時でも、介入効果が維持されていた。(4)自動思考においては、ポジティブな自動思考である「サポートへの期待」得点が、介入前から1年後のフォローアップ時点にかけて有意に増加し、逆にネガティブな自動思考である「絶望的思考」の得点が、この期間で、有意に減少していた。しかし、介入直後の効果は、自動思考では出現しなかった。以上の結果から、本研究プログラムで取り上げられた社会的スキル訓練と認知的再構成法は、いずれも小学4年生の抑うつ傾向を改善する方向に働いていたことが確認された。特に、認知の誤りにみられた得点の変化は、抑うつ得点の変化ときわめて類似していることから、認知的再構成法による働きかけの効果が大きな効果をあげた可能性がある。最後に、平成24年度に実施された小学6年生の介入効果と平成25年度に実施された小学4年生を対象とした介入効果を比較すると、いずれの抑うつ予防プログラムも介入後の抑うつ得点を減少させていたが、1年後のフォローアップ査定時では、小学4年生の維持効果が大きいことが分かった。
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