「他者との関係性の形成過程」を明らかにするためフラッシュバックの現象やその不安にともなう自己存在基盤の脆弱さについて初年度、検討した。それを踏まえ2年目、3年目は「支援者との関係性の形成を基盤にして過ごす段階」、「支援者から対象児のいる場へ歩み寄り小集団のなかで過ごす段階」、「複数の支援企画から興味・関心のある企画を選んで取り組みに参加して過ごす段階」を経て「他者との関係性の拡がりによる集団の場のなかで過ごす段階」に至る、「自閉症スペクトラム障害児の変容過程の段階性」を場への参加の仕方を通して確認した。その段階性により関係発達的支援で重要視される「他者との関係性」を基盤とした「能動ー受動」による快の情動共有経験が生じてくる支援姿勢、支援構造が機能していたことが示された。 4年目以降は「自分の型を押し通して過ごす段階」、「支援者との関係性を基盤として過ごす段階」、「他者と関わる共有経験を通して他者との行動の「ズレ」に気づかされながら過ごす段階」、「企画に自分の型やファンタジーを重ねたり、複数の他者に合わせてもらったり、集団のルールに合わせて折り合いをつけて過ごす段階」を経て「他者を意識すること(受動性)が触発され、他者の意図や感情の「ズレ」を意識しながら過ごす段階」への変容過程を検証した。自閉症スペクトラム障害児の「向かう力(能動性)」が自己同一性の変容に影響を与えていることを確認した。 最終年度は支援の着想、支援姿勢と支援構造を検証した。活動を通した自然な展開による他者へ意図や感情を向けたり、受けとめることで他者との「ズレ」を埋める相互作用や「状況や場面を捉える感覚」が生じる契機を作る必要性が確認された。支援者主導による支援法が主流である現状において、関係発達的支援は子どもの主体性による他者理解、自己理解、自己同一性の形成への支援として重要な意義があると考えられる。
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