研究課題/領域番号 |
24530887
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 宇都宮共和大学 |
研究代表者 |
加藤 邦子 宇都宮共和大学, 子ども生活学部, 教授 (40617784)
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研究分担者 |
間野 百子 宇都宮共和大学, 子ども生活学部, 教授 (10405095)
牧野 カツコ 宇都宮共和大学, 子ども生活学部, 教授 (70008035)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Harmony / Diversity / Activity |
研究概要 |
1.世代間交流プログラム及びその評価に関する先行研究について検討し、現状と課題を論文として発表した。2.世代間関係構築に関する鍵概念を検討するために日・米の実践を視察、研究交流した。(1)日本の子育て支援における世代間関係に関する実地調査:①品川区「おばちゃん家の10周年記念」に参加し交流。②「シニア世代による絵本のよみきかせ活動(りぷりんと)」において、孫世代との交流を見学し定例会に参加した。③障がいをもつ子どもを育てた世代が、地域の子育て世代と交流する「マザーズジャケット」フリートークにおいて、若い親の悩み事に耳を傾け、障がいのある子どもを育てる親の思いに共感する活動を見学し、傷つきからの踏み出しという鍵概念について検討した。(2)アメリカの子育て支援における世代間関係の検討:①Phoenixでシニア施設と保育所との交流を実践している〝Beatitudes AgeLink Intergenerational Child Care Center"の見学とスタッフからの聴き取り。②質問紙GSNI尺度、Harmony概念について検討するために、Strom,R & Strom, P. との研究会開催。③National Conference of Family Relations 74th大会に参加し、海外の研究者と交流。SanFransiscoの"Aldersgate United Methodist Church Palo Alto"(Roger Morimoto)における多世代のインタビューを実施。 3.日本発達心理学会第24回大会ラウンドテーブル「異世代間の関係を構築する:理論の検討」を開催し研究交流を実施した。 4.GSNI尺度項目による研究『孫からみた祖父母との関係に関する研究』保育・教育・福祉研究,Vol.11:25-43.の論文を発表。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高齢者と子育て期の親との世代間関係を維持する要因を明らかにし、地域援助システムの構築と適切な介入についての提言を目的としてとりくんだ。 24年度は世代間交流プログラムの検討を行い、「従来型」と「発展型」の違いを踏まえた上で、日本の世代間交流の現場を視察し、多様な世代間関係について検討した。たとえば「おばちゃん家」、「りぷりんと絵本の読み聞かせ活動」「障がい児をもつ親同士の交流」の現場における異世代間の交流から鍵概念を抽出した。さらにアメリカでは、シニア施設と保育所との交流を見学し、Strom,Rおよび Strom, P. と研究会を開催し、Diversity、Harmony、Activity概念について、研究交流を活発に行った。さらにパロアルトの日系人教会を訪問し、多世代を対象とした世代間関係に関するインタビューを実施した結果、シリコンバレー高学歴層の老若の立場の逆転、日系人家族の異世代関係の構築を検討することができた。以上を踏まえた結果、多様性、Harmony、活動という概念をキーワードとして抽出することができた。さらに詳細に検討した結果、障がいをもつ子どもを育てた世代が主催した交流の場においては、若い親の思いに共感するという実践に立ち会うことができ、支援者側の「過去の再構成」という心的機制によって、相互の関係構築につながることが導かれた。すなわち、支援者側の「過去の傷つきからの踏み出し」が若い子育て世代への支援に結びつくという仮説設定に結びついた。 日本発達心理学会ラウンドテーブル「異世代間の関係を構築する:理論の検討」を開催し、参加者との活発な意見交換を通して、理論構築に関心が高いことを実感した。祖父母と孫の関係についての文献研究を行うとともにStromらのGSNI項目を用いた調査研究を実施し論文発表ができた。以上を踏まえた結果、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1.平成24年度に取り組んだ海外視察、国内視察、インタビュー、調査、学会参加などから得た子育て支援における鍵概念を総括する。その結果Harmony、Activity, Diversity,過去の傷つきからの踏み出し、過去の再構成などの概念をすでに抽出してある。これらの鍵概念を含め、子育て世代とシニア世代を対象とした調査項目を作成選定し質問紙を作成する。 2.子育て支援においては、40歳以上のシニア世代は、子育て世代との出会いや関係性を通して、自らの子育て期における苦労などの体験における「過去の傷つき」を再構成するものと考えられる。過去を再構成しそこからの踏み出しによって、若い世代に無理なくよりそうことが可能になると仮定できる。一方、子育て世代は、支援者から働きかけを受けることで、「よいお祖母さん(お祖父さん)転移」(Stern, 1995)によって支えられ、シニア世代との関係の構築をさらに促進すると考えられるのである。このようなプロセスモデルを理論として提示し、調査分析によって実証的に検討する。 3.子育て世代にとっては、シニア世代と交流することによって、Sternが提示した「よいお祖母さん転移」だけでなく、シニアの男性に支援されることで「よいお祖父さん転移」の現象も生じるものと推察される。このような理論を構築することで、子育て世代と男女のシニアによる相互扶助のシステムが説明可能になると考えている。 4.子育て支援に携わるシニアだけでなく、広くシニア世代に対する調査の実施を計画し、子育て支援群と比較検討することも視野にいれて研究を推進する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
調査費(アンケートの配布・回収、専門的知識の提供、資料整理、業者への支払いのための経費などの人件費・謝金) 40歳~70歳までを対象とした世代間関係に関する調査:予備調査費100000円 未就学児を育てる親世代、及び40歳~70歳までを対象とした世代間関係に関する調査:本調査費 800000円 旅費 (調査のための経費など)200000円 物品費 200000円 その他(研究成果発表費用など) 130000円
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