研究課題/領域番号 |
24530888
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
長田 由紀子 聖徳大学, 心理・福祉学部, 教授 (70172781)
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研究分担者 |
長田 久雄 桜美林大学, 自然科学系, 教授 (60150877)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ハンセン病 / ハンセン病恢復者 / ライフレビュー / 高齢者 |
研究概要 |
ハンセン病療養所等の入所者は高齢化しており、寝たきり状態や認知症、認知症のリスクの高まった人も多い。本研究は、ハンセン病療養所入所者にライフレビュー(人生の回顧)を中心とした面接を行い、人生の語りを受け止め共感的に寄り添うことを通して、1)大きな葛藤を経験した人が過去と和解し人生を意味づけることを援助する、2)経験の「意味づけ」のプロセスを明らかにする、3)入所者の現在の希望や対応すべき課題を明らかにする、4)入所者の心の安寧と認知症の予防に向けて、傾聴活動を用いた具体的支援方法を検討する、5)傾聴を通しての聞き手の成長について考察することを目的としている。 研究初年度にあたっては、研究者および共同研究者、研究補助者等、次年度からの面接に携わる者がハンセン病についての理解を深める期間とした。具体的には、勉強会の開催、資料館の見学、「語り部」として活動している方の話を聞く、映画や書物から情報を得る、などである。文献に関しては、書物のほかに、国内を中心とした関連研究についてレビューを行った。 また、全国の療養所職員の研修会において、心身の加齢変化と高齢者にとっての回想(ライフレビュー)の意味についての話題提供の機会を得たので、併せて研究計画について説明し、今後の研究への協力を依頼した。参加した職員からは関心を得ることができ、研究に対する期待の声も寄せられた。 以上の活動を通し、これからの研究対象者となる方々との会話や職員との会話の中から、あらためて本研究の難しさと意義を確認することができた。その結果、今後の研究に、職員を対象とした調査や、学生などを対象にハンセン病と恢復者に対する知識や理解のための啓発の方法を検討するなど、本年度の準備から得られた情報に基づき、建設的かつ発展的な変更を加えることを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標は、ハンセン病について研究者自身が理解を深め、併せて研究対象施設との関係を強めることであった。ハンセン病恢復者の方々は、長い間の偏見や理不尽な対応に苦しんできたことから、外部者が関わることを歓迎しない人も少なくない。したがって、時間をかけてゆっくりと信頼関係を気づいてゆくことが、研究を進める上で必須であると思われた。 最初に研究代表者と研究分担者が恢復者の会の責任者に挨拶に訪れた際、懐疑的と思われる様子が見られた責任者の方も、たびたび顔を会わせる中で友好的・協力的な態度を示して下さるようになってきた。また、全国の療養所職員の研究会でライフレビューの意義を説明したことから、職員の研究に対する理解は促進されたと思われる。個々の対象者の募集は今後の課題であり、個々の人との信頼関係構築は容易ではないことは予想されるが、研究の可能性と限界を見据えつつ、方針の変更を含め柔軟に対処し、可能な限り研究を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、療養所入所者に対する調査の実施を予定している。そのために必要な手続きとしては、①具体的な調査計画に基づき本学倫理委員会に申請書を提出し承認を得る。②同時に調査協力者を募集する(思うように協力者が集まらない場合は、語り部として活動されている方や、既に顔見知りとなっている方を対象とする)③インタビューガイドに従って面接調査を行う。④なお、面接は承諾を得て録音し、テキストデータを作成する。⑤主に質的分析を用いて分析を開始する。 また、平成24年度の職員研修会の参加者(全国のハンセン病療養所の職員)を対象に聞き取り調査を行い、施設高齢者への対応における問題点、困っている点などを聞き取る(療養所入所者にとって、外部の人間を受け入れ話をすることは困難を伴うことが予想される。そこで、今後、職員を通してのライフレビューインタビューも視野に入れて調査を行う)。 さらに文献研究は引き続き行い、これまで得られているデータや研究をもとに二次的な分析の可能性も探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
①調査の実施費用として、旅費、研究補助者への謝金、調査対象者への謝礼等を予定している。 ②全国の療養所の職員を対象とした面接調査のため、旅費、研究補助者への謝金、調査対象者への謝礼等を予定している。 ③文献検索とその整理、調査の準備、結果の整理のため、研究補助者への謝金を予定している。
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