本研究の目的は、ハンセン病療養所の入所者に人生の回想(ライフレビュー)を中心とした面接を行い、人生の語りを受け止め共感的に寄り添うことを通して、1)大きな葛藤を経験した人が過去と和解し人生を意味づけることを援助する、2)経験の「意味づけ」のプロセスを明らかにする、3)入所者の現在の希望や対応すべき課題を明らかにする、4)入所者の心の安寧と認知症の予防に向けて、傾聴活動を用いた具体的方法を検討する、5)傾聴を通しての聞き手の成長について考察することであった。 平成24年度は、研究協力者を交えて勉強会を開き知識を共有すること、語り部として公に活動している方の話を聞くこと、文献と通してハンセン病の理解を深めた。平成25年度は、いくつかのハンセン病療養所を訪問し、職員および入所者からの聞き取りを行う一方で、調査の可能性を検討した。平成26年度は、引き続き各地の療養所への訪問を行った。その中で、1療養所においては1年間継続して施設内の研究会に参加し、職員が抱える終末期の問題を共に考える機会を得た。また、1療養所において入所者への調査を実施し、7名の方からライフレビューを伺うことができた。さらに、職員への個別面接を実施した。 以上を通して明らかになったことは、①入所者の方がどのように自分の人生をとらえるかの個人差は非常に大きいこと(療養所のあり方、そこでの生活、人間関係等によって、大きく異なる)、②超高齢化する各療養所において、終末期への取り組み方が手探りで行われており、そこには「個人の生き方」への理解が欠かせないこと、③施設で働く職員は、容易にはいかない看護・介護活動の中で入所者から多くのことを学んでいること、であった。協力者・協力施設は徐々に広がっており、入所者・職員へのインタビューは今後も継続して行う予定である。
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