研究課題/領域番号 |
24530889
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
山口 創 桜美林大学, 心理・教育学系, 准教授 (20288054)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 施設入所児 / アタッチメント / 愛着障害 / オルタナティブアタッチメント |
研究概要 |
今年度は、乳児院の入所児と保育園に通園する児とで、心理・行動面の特徴について、CBCL2-3を用いて比較検討を行った。埼玉県の乳児院の入所児(N=23、平均月齢=40.85ヶ月)に対しては担当する全職員に対して調査を行った。その際0~2歳児で病気や障害のない児を対象にアンケート調査を依頼した。一方、神奈川県の保育園に通園する児(N=13,平均月齢=19.91ヶ月)の母親に対して同様の調査を実施した。 その結果、保育園児の方が高い傾向がみられた項目は次のものであった。「静かに座っていられない。落ち着きがない」、「大人にまとわりつく。または頼りにしすぎる」、「反抗的である」、「少しでもいつも通りにやらないと機嫌が悪くなる」、「一人では寝たがらない」、「人が話しかけるとき、答えない」、「他人を叩く」、「親を探したり、呼んだりする」、「手に負えないと思うことがある」。そして、乳児院の入所児の方が「成長が遅れている」傾向も現れた。 これらの結果から、親が評価する保育園児の方がより問題を抱えている傾向があることが読み取れた。その理由としていくつか考えられるが、乳児院の入所児は職員の手が不足して、欲求を訴えたり甘えたりすることができない環境にいることが一因として考えられる。そのため、いわゆる「サイレントベビー」のような症状を呈しているとも考えられる。 ただし、今回の調査では保育園での子どもの方が月齢が高かったために、そのような傾向が現れた可能性もある。今後、乳児院では職員の交代に際して児の心理・行動面にどのような変化が現れるか明らかにするため、同一児を対象に継時的に追跡調査を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象となる乳児院の選定に時間がかかったが、年度の後半から調査を開始することができ、順調にデータを蒐集している。 また、次年度から使用する予定の生理データを測定する機器の選定も済ませ、次年度の開始と同時に使用することができる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度は児と関わるボランティアを募集し、0~1歳児(約10名)との安定したアタッチメントを築くために、週に1回程度の頻度で継続して特定の児と関わってもらい、身体接触を用いた関わりをしてもらう。 そしてそのような関わりを約1年間継続する前と後の2回、ボランティアへの面接と質問紙調査、及び可能であれば行動観察と生理データ(サーモグラフィによる体表温)の採取を行い、児のアタッチメントの変化について明らかにする。 平成26年度は、全国里親大会の参加者及び機縁法により、既に里親をしている女性(約30人を予定)に研究への参加を依頼し、承諾の得られた方に面接と質問紙調査を行う。許可が得られればデジタルレコーダを用いて録音する。また必要に応じて適宜家族や周囲からも補足的に情報をいただく。面接は半構造化面接のスタイルを用い、里子とのアタッチメント形成の過程についてインタビューを行う。面接の内容は、児を里子にしたときの児の年齢、児が施設に入所していた理由(虐待や発達障害の有無など)、里子の養育開始時点から1年ごとのアタッチメントの様相、児との関係において困難や問題に思っていることなどについてである。結果については、KJ法やグラウンデッド・セオリーなどの質的方法によって結果を得る予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度使用しなかった額は414,014円であった。これは当初の計画では、使用する生理データとしてオキシトシンとコルチゾールを検討していたが、オキシトシンの唾液からの測定の妥当性について確立されていないことが判明したために、その測定をサーモグラフィによる体表温度の測定に変更したことによるものである。 平成25年度には、ボランティアスタッフや施設職員への謝金が発生することや、データ測定の手伝い及び、得られたデータの入力やデータ整理をするアルバイトへの支出が予想される。また平成24年度の研究成果について学会発表する予定である。
|