研究課題/領域番号 |
24530889
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研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
山口 創 桜美林大学, 心理・教育学系, 准教授 (20288054)
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キーワード | 乳児院 / アタッチメント / 身体接触 / 抱っこ |
研究概要 |
本研究では、養育者との代表的な身体接触行動である抱っこをとりあげ、乳児院の入所児と保育園児とで、抱っこにおける行動や、アタッチメント関係を反映するとされる抱っこによる体温の変化について比較検討を行うことを目的とした。 参加者:乳児院に入所している2歳児1名(男児)および、保育園の園児3名とした。日時:2013年11月~12月にかけて行った。方法:ボランティアを募集し、対象児への抱っこを継続的に行い、その前後でサーモグラフィにより乳児の額の皮膚温を測定した。 手続き:乳児院でのボランティアは60歳代の女性1名であり、週に1回の頻度で3か月間、乳児院の一室で同一児の抱っこを行った。抱っこの時間は1回あたり5分とした。 保育園でのボランティアは20代女性1名であった。ボランティアが抱っこを5分間行い、その前後でサーモグラフィにより額の皮膚温の測定を行った。さらに保育園児3名を対象にPARTを行った。 実験の結果、実験前の乳児院での1歳児の皮膚温は、プリテストでは30.21度でありポストテストでは30.23度であった。3か月の時点では、プリテストでは30.24度でありポストテストでは33.15度であった。一方保育園児についてプリテストではX=30.63度であり、ポストテストではX=33.56度であった。また、PARTによるアタッチメントの分類では、父親型が2名、保育士型が1名であったが、体温の変化はアタッチメントのタイプによる違いはみられなかった。以上のことから、アタッチメントのタイプに関わらず、保育園児は抱っこにより体温の上昇がみられるが、乳児院の入所時の場合そのような傾向はみられなかった。しかし乳児院で抱っこを継続することにより、保育園児と同様の体温変化がみられるようになったことから、ボランティアに対してアタッチメント関係が築かれてきたことが読み取れた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間の2年が経過したが、概ね計画通りに実施できている。研究初年度は実験の準備段階として、研究協力して頂ける乳児院やボランティアを探すことができた。2年目は、アタッチメントの指標として、当初予定していたオキシトシンの測定の代わりに、サーモグラフィにより子どもの体温を測定することとなったが、3年目に予定通りオキシトシンを測定する実験を実施できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、これまで実験の際の指標としてこなかったオキシトシンについての測定をさらに試みたい。オキシトシンは愛情や信頼に関わるホルモンとして知られており、乳児院でのアタッチメントの関係について測定する際には、重要な指標であると考えられるためである。 オキシトシンはどのような身体接触によって分泌されるのか、研究が始まった段階である。先行研究では夫婦や親子のように、既知の間柄の二人が身体接触をする際に分泌されることは確認されてはいるが、初対面の2者で分泌されるかといった検討はなされておらず、また抱っこやタッチケアといった接触方法の違いについても明らかにされていない。 そこでオキシトシンについては乳児院で本実験を実施する前に、成人や子どもを対象にタッチケアによって変化する可能性についてあらかじめ検討を行い、それが確認されてから乳児院での検討に入る予定にしている。 そこで上記の研究のほか、当初の計画通り、今年度は里親をしている方への面接調査を実施して、そこでの子どもとの関係や、必要な支援などについて詳細にインタビューする。また乳児院で抱っこをしている方にアンケート調査を依頼し、子どもの心身の様子が抱っこによってどのように変化するかについて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、乳児へのオキシトシンの測定を予定していたが、採血の可否などの条件により、測定することができなかった。その代わりとして、サーモグラフィによる体表面の温度を測定することで、アタッチメントの指標とした。 今後、これまで実験の際の指標としてこなかったオキシトシンについての測定をさらに試みたい。オキシトシンは初対面の2者で分泌されるかといった検討はなされておらず、また抱っこやタッチケアといった接触方法の違いについても明らかにされていない。そこでオキシトシンについては乳児院で本実験を実施する前に、成人や子どもを対象にタッチケアによって変化する可能性についてあらかじめ検討を行い、それが確認されてから乳児院での検討に入る予定にしている。 そこで上記の研究のほか、当初の計画通り、今年度は里親をしている方への面接調査を実施して、そこでの子どもとの関係や、必要な支援などについて詳細にインタビューする。また乳児院で抱っこをしている方にアンケート調査を依頼し、子どもの心身の様子が抱っこによってどのように変化するかについて検討する。
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