研究課題/領域番号 |
24530891
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
鋤柄 のぞみ 日本医科大学, 医学部, 助教 (80614734)
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研究分担者 |
野村 俊明 日本医科大学, 医学部, 教授 (30339759)
石村 郁夫 東京成徳大学, その他部局等, 助教 (60551679)
山口 正寛 東京成徳大学, その他部局等, 助教 (90583443)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 臨床心理学 / 自己への思いやり / 感情調整 / コンパッション・フォーカスト・アプローチ / 心理教育的介入法 / 大学生・大学院生 |
研究概要 |
自己への思いやり(Self-compassion)の態度を育成・強化する心理教育的介入プログラムの開発と有効性の実証に向けて、自己への思いやりを生成し構成する主要素の抽出と検討とともに、自己への思いやりを育成する課題の効果について、幅広い観点から、一般大学生を対象に実証した。それぞれ日本国内と諸外国両方の学会にて発表した。 1.自己肯定課題(ほめ日記)を実施し、自己感情、多面的感情状態、対人関係性等から検討した結果、抑うつ・不安感情が低減され、本来感、自尊感情、自己への思いやりが高められ、ありのままの自分で振る舞えるようになることが明らかにされた。 2.自己肯定課題(ほめ日記)を実施した結果、ウツの諸症状であるウツ状態や反すうが軽減され、問題解決策を探ろうとし適度に気分転換できるようになり、将来を悲観するのではなく対処方法や希望を見出せるようになることが示された。本研究については、日本ヒューマン・ケア心理学会学術集会第14回大会(東京.2012.)にて、ポスター発表部門・優秀発表賞を受賞した。 3.自己への思いやりと密接に関連がある愛着スタイル(Gilbert,2010)について、愛着スタイルのタイプによる自己への思いやりの特徴を検証した結果、愛着スタイルの安定・回避型は自己への思いやりが高く、不安・混乱型は自己嫌悪感が高いことが示された。 以上、自己への思いやりに介入する課題実施がもたらす諸効果や関連する変数が示されたことは、本研究推進の意義を確認するとともに強化したと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目的に掲げた研究1:自己への思いやりについての概念的整理および自己への思いやりを臨床実践場面で活用するコンパッション・フォーカスト・アプローチ(Gilbert)から介入法の主要な要素を網羅的に抽出する作業を終えることができた。また、同じく初年度の目的である研究2:一般大学生を対象にした質問紙調査による自己への思いやりの生成条件の抽出と精査についても、自己肯定課題を用いて自己への思いやりの態度を育成・強化することで生じる効果について幅広い視点から検討することと、愛着スタイルのタイプによる自己への思いやりの特徴を検討することを通じて一定の知見を得るなど成果をあげることができた。そして、研究1と2の結果に基づき、本研究が目標とする心理教育的介入プログラムの叩き台を考案するに至っている。以上を達成度の理由と考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は研究3と研究4を推進する。まず、「研究3:一般大学生を対象にした自己への思いやりの態度を育成する介入プログラムの試験運用」では、前年度の研究成果から作成した介入プログラム(コンパッション・フォーカスト・アプローチ:全8回のエクササイズ)の基礎段階を、一般大学生に実施して妥当性を検討する。自己への思いやりの介入が短期的に変容可能か、その際に重要な要素は何か等について、面接法、観察法、自己感情変数および感情体験を測定する変数についての質問紙尺度を用いて、本プログラムの事前・事後・追跡評価(約1ヶ月後と3ヵ月後)を実施する。一方、「研究4:大学生・大学院生の精神科受診動向の基礎資料の収集と感情調整機能の探索的検討」では、申請者らが所属する医療機関に通院中の大学生・大学院生のうち、症状や治療方針を考慮し、主治医および本人の同意が得られた対象者に質問紙調査を実施する。倫理的配慮に徹底のうえ、主訴をはじめとする診療情報について一人ずつ収集する観察研究とともに、自己への思いやり尺度や感情調整尺度など簡便な内的指標に回答を求める。 平成26年度は、「研究5:自己への思いやりの態度を高める介入法の臨床的施行とアウトカム評価」を推進し、本研究の最終成果を取りまとめる。研究4に協力いただいた大学生・大学院生を中心に、研究3を通じて妥当性が確認された介入プログラムを実施して効果を検討する。同意を得られた対象者を介入群とWaiting List群へ無作為割り付けし、事前・事後に簡便な指標を用いて本プログラム実施結果の評価を行う。また、介入群には約1ヶ月後と3ヵ月後に追跡調査も行う。以上によって、自己への思いやりの態度を育成・強化させる心理教育的介入プログラムの開発、および有効性について成果を取りまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該研究費が生じたのは、前年度研究にかかる諸費用(物品費、旅費、人件費、その他:諸学会への参加費用や印刷費など)について、当初の試算以下で実施可能だったゆえの残額である。 次年度の使用計画は、1.物品費:関係書籍の追加収集、文房具類、2.旅費:国内外の学会および研修参加にかかる交通費と宿泊費、3.人件費・謝金:研究3と4に協力いただく被験者への謝礼(およそ40~80名予定)、資料整理やデータ入力・分析作業等の協力者への謝礼、4.その他:研究3と4で用意する質問紙、調査用紙、介入プログラムの印刷費、諸学会での研究発表と参加費用などである。
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