27年度は、これまで積み重ねてきた「法と心理臨床の協働-司法臨床」の実践について、司法領域に留まらず、福祉、臨床、教育、産業領域における法と臨床のアプローチについて研究を拡げた。具体的には、それぞれの領域における援助者にインタビューを実施して、その領域における被援助者の特性を踏まえた司法臨床の必要性について明らかにした。 また、司法臨床における加害者臨床については、加害者家族への援助に焦点化して研究を実施した。加害者家族の実態を調査したうえで、加害者家族の疲弊、援助回避傾向などにどのようにアプローチすることが望まれるのかについて検討した。研究結果については、日本心理臨床学会や各研究会で発表した。 27年度の研究成果を踏まえて、今後は法や臨床の専門家ではない対人援助者である司法臨床の適用と応用可能性について実証する。具体的には、保護司、民生委員、青少年委員、母子相談員、などにインタビューを実施したうえで、それぞれの対人援助者の援助の特徴を詳細に調査する。 法や臨床の専門家ではない対人援助者の援助において期待されていることはいわゆる社会的常識や見識にもとづいた対応であるが、彼らが対象にする諸問題は、極めて法的事項と絡みさらに人間関係など臨床的関与が必要になる問題や紛争である。そのような諸問題に対人援助者が対応するためには、経験だけに頼ることには限界があり、ましてや独善的な価値観による判断は避けなければならない。その意味においても対人援助者が司法臨床の知見を獲得することは必須課題である。そのために司法臨床の機能を援助のどの段階でどのレベルまで適用することが可能かについて見極める必要がある。 27年度の研究成果を含めて研究実績を広く社会に還元するために、「司法臨床」の方法を実践に則したできるだけ分かりやすい著書を有斐閣から出版する予定である。
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