研究課題/領域番号 |
24530900
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研究機関 | 福岡女学院大学 |
研究代表者 |
奇 恵英 福岡女学院大学, 人間関係学部, 教授 (40412689)
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研究分担者 |
大野 博之 福岡女学院大学, 人文科学研究科(研究院), 教授 (00037037)
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キーワード | 震災支援 / 主動型リラクセイション療法 / 生活不活発病 / 精神的健康 |
研究概要 |
2013年8月5日~8月12日(第4回目)と、2014年3月23日~3月30日(第5回)の2回に渡って、岩手県宮古市にある仮設住宅の被災者を中心にデータを収集した。特に第5回の研究調査においては、在宅被災者やみなし仮設(仮設住宅ではないが、被災者が多く在住するアパート)へと対象を広げた。 第4回目の研究調査終了後、短期継続参加者(4回中2回参加者)と長期継続参加者(4回中3回以上)の「生活不活発病チェックリスト」の平均とGHQ-12(精神的健康チェックリスト)の得点を比較した。その結果、生活機能の高さにおいては、初回時の長期継続参加者の震災後得点平均が短期継続参加者に比べ有意に高く(p<.01)最終回平均についても初回参加者より長期継続参加者の得点平均が短期継続参加者に比べ有意に高かった(p<.05)。『GHQ-12』については、短期・長期継続参加者間において、初回及び最終回の得点に有意差はみられなかった。各群ごと、初回と最終回のGHQ-12の得点を比較したところ、短期継続参加者、長期継続参加者それぞれ、群内に有意差があり(p<.05;p<.001)、初回より最終回の得点が低く、精神健康度が高まっていることがうかがえた。 第5回目の研究調査終了後、単回参加者と2回以上の継続参加者を比較した。その結果、継続参加者が単回参加者に比べ、生活機能が有意に高く(p<.05)、GHQ-12においては有意差はみられなかった。統計的な有意差はみられなかったが、震災から2年以上経た第4回目及び第5回目の研究調査において、リピーターの精神的健康度が初参加者より高く、全般的に心身の健康を維持していることがうかがえた。 以上の調査研究から、長期的震災支援の重要性を確認するとともに、本研究の方法の持続的効果が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、仮設住宅在住の被災者を対象としていたが、時間経過とともに、これまで支援を望めなかった在宅被災者、みなし仮設在住者に広がったこと、主動型リラクセイション療法という臨床心理学的手法が、継続的に本調査研究に参加された被災者の心身の健康改善または維持に寄与していることをデータをもって明らかにできたことは有意義と思われる。 なお、本研究の手法の効果から、時間経過とともにさらに現地で歓迎され、毎回ごとに前回より多くのデータを得るなど、さらに発展、展開しているところから、大変貴重なデータを得られたことは今後の震災支援の研究に大きく役立つと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
2015年8月及び2016年3月に、同様の地域で、2回の継続的調査研究を行う予定である。その際、本研究の震災支援に参加していない被災者のデータも収集し、本研究の手法による震災支援の有・無に違いがあるのかについて検証する予定である。 なお、本研究課題の最終年度であることから、今まで収集した膨大なデータを集約し、多角的に分析することによって、今後の、臨床心理学的手法による震災支援の発展に寄与できる研究成果を学会等で発表、論文掲載、報告書の発行を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究調査が年度末の3月30日に終了したため、年度内の支払いが終了せず、繰り越すことになった。 2013年度の研究調査費用等を支払う。2014年度においては、2回の震災支援研究調査を行う予定なので、それに必要な研究代表者及び研究協力者の調査のための旅費、宿泊費等に使用する予定である。
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