研究課題/領域番号 |
24530902
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 別府大学 |
研究代表者 |
矢島 潤平 別府大学, 文学部, 准教授 (30342421)
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研究分担者 |
長谷 真 別府大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (50425203)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 心理的ウェルビーイング / 主観的幸福感 / レジリエンス / 心理的ストレス反応 / フィールド調査 / バイオマーカー / 起床時コルチゾール反応 |
研究概要 |
本研究では,心理的ウェルビーイングと心理社会的要因,健康状態,バイオマーカーとの関連性ならびに実験室場面での心理生物学的ストレス反応を検証しメカニズムを解明することを目的としている。本年度は,大学生を対象にフィールド調査を行い以下の知見を得ることができた。 研究1:主観的幸福感と心理社会的要因との関連性 大学生を対象者に集団法にて,日本語版主観的幸福感尺度,心理的ストレス反応尺度,S-H式レジリエンス尺度,UCLA孤独感尺度,日本版健康関連行動調査,精神健康調査票及びベック式抑うつ尺度を実施した。主観的幸福感の低い個人に比べ高い個人は,抑うつ得点が低く,ソーシャルサポートが高いことが示されるとともに,孤独感が低く,対人場面における自信のなさや緊張,消極性が低かった。主観的幸福感を独立変数とし,他の尺度を媒介変数及び従属変数とした共分散構造分析を行ったところ,主観的幸福感にレジリエンスが直接影響し,ストレス反応を軽減することを明らかにした。心理的ウェルビーイングの高い個人の健康状態が良好であることを示唆している。 研究2:主観的幸福感と起床時コルチゾール反応(CAR)との関連性 仕事従事者を対象に起床時、起床30分後及び就寝時の唾液を平日と休日の2回採取してもらうとともに,主観的幸福感,精神健康調査票を実施した。主観的幸福感の低い個人では,平日,休日ともに顕著なCARが認められなかったが,起床30分後において休日と比較して平日が有意に高かった。主観的幸福感の高い個人では、平日,休日ともに顕著なCARが認められ,起床30分後と就寝時において休日と比較して平日が有意に高かった。心理的ウェルビーイングの高い個人ほど適応的なコルチゾール反応を示していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に従って,フィールド調査を実施し,質問紙調査の統計解析並びにコルチゾールの測定も本年度中に終了した。研究成果の一部は,日本ストレス学会や国際行動医学会にて,発表を行っている。研究成果を,研究室のホームページにて随時紹介する点が若干遅れているが,平成25年度の計画と並行して行うことで特に進展に問題はない。 平成25年度以降も,本年度の研究成果を踏まえて研究を遂行していく予定である。現状,研究の変更等は予定しておらず,当初の計画書に従って実施する。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画書に従って,フィールド調査にて,心理的ウェルビーイングの高い個人と低い個人を抽出し,実験室でのストレス負荷実験による心理生物学的ストレス反応を比較検証する。 フィールド-実験研究:心理的ウェルビーイングのカットオフ得点に基づいて高得点群と低得点群を20名ずつ選抜する。実験手続きとして,実験室に入室後,10分間の順応期,メンタルストレステスト(課題期)を施行し,30分間の回復期を設定し実験を終了する。課題期前後と回復期(15分経過時と30分経過時)に唾液の採取とストレス状態質問紙の自己評価を行う。実験中,心拍,HF波及びLF/HF波を連続測定する。メンタルストレステストと統制条件をカウンターバランス条件で同一対象者に2回行う。課題としては,スピーチ課題(実験者2人の前にて、対人緊張を喚起するテーマについて話してもらう課題,5分)と暗算課題(2097から13を連続して引く課題,5分)を行う。統制条件としては,ストレス課題を負荷せず,モニターにて自然映像を流し視聴してもらう(10分)。心理的ウェルビーイングの高低いかんによって,メンタルストレステストによって誘発されたPNEI 反応(コルチゾールの上昇,s-IgA 抗体産生量の低下,MHPG 含量の増加)や血管老化、自律神経機能バランスの変調を予測するバイオマーカー及び主観的ストレス反応がどのように異なるのか比較検討する。これらバイオマーカーを予測する心理社会的要因の抽出を試みるとともに,心理的ウェルビーイングのストレス反応軽減効果について,心理生物学的基礎過程の解明を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.消耗品として,CES-D(1組50名4.2千円)及びGHQ-28(1組50名11.5千円)の購入代金,唾液を採取するサリソフト(200個入り,20千円),s-IgA(MBL社EIAキット,1キット40千円)とコルチゾール(SAL社EIAキット,1キット31千円)の測定用キットとfree-MHPGを測定する際に使用する生化学定量試薬(酢酸エチル,トリフルオロ酢酸等,30千円)、サンプル保存用のマイクロチューブやフリーズボックス等(40千円)、データ保存用としてUSBメモリ(40千円)を計上する。 2.旅費として,日本心理学会(大分-北海道3泊4日,100千円)での成果発表の国内旅費を計上する。アジア健康心理学会(大分-韓国,150千円)等で成果発表の外国旅費を計上する。 3.人件費・謝金として実験対象者謝礼(1人1千円)、データ収集の補助(1月20千円)、実験協力者謝礼(1回の実験に2人の実験者)を計上する。 4.その他として,ホームページ維持費(50千円),質問紙の印刷費(30千円),成果発表費(学会参加費等),研究成果投稿料(20千円),英文校閲料(30千円)及び対象者への連絡を目的とした通信費(10千円)を計上する。 なお,設備備品はすでに本学に設置してあるので計上しない。いずれも本課題研究を遂行するにあたり必要な経費である。
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