研究課題/領域番号 |
24530906
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
川端 康弘 北海道大学, 文学研究科, 教授 (30260392)
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キーワード | 高次視覚 / 色覚 / 色認知 / シーン再認 / 空間周波数 / fMRI / 2色型色覚 / デッサン熟達者 |
研究概要 |
高次視覚システムの中で機能する色認知システムの特性を研究するには、過去の視覚初期過程の特徴抽出の研究の場合と同様に、その時空間特性を考慮する必要がある。初期過程の先駆的研究が色情報の寄与を低く見積もったのは、この特性を考慮しなかったためである。最近の高次色認知研究にもその傾向があり、結果の多くで色の寄与は低い。そこで本研究では、色の特性に適した大局的な時空間配置を用いて高次色覚認知に関する心理学的実験を行い、色の寄与を明確にする。 25年度は、前年に行ったシーン再認に関する心理学実験において、大局的な空間構造に色情報が布置されたとき、および局所的詳細に輝度情報があるとき再認成績が良く、空間構造と色(輝度)情報の間に相互作用が見られたことをふまえ、fMRIによる脳機能計測を引き続き行った。計測は当初の計画通り進捗しており、全体のおよそ6割程度の脳機能画像を取得し、一部データの解析を開始している。また本年度は個人差の検討を中心に2つの行動実験を行った。シーン再認について、デッサン熟達者と一般の大学生の結果と比較すると、デッサン熟達者の方の記憶成績が良く、一般学生に比べて色の手がかりをより有効に利用していることが示唆された。また6名の2色型色覚の参加者にも加わってもらい、同様の再認実験を行った。彼らは生まれつき色の見えが制限された視覚を持つが、その範囲は赤緑だけであり、青黄領域は制限されない。また一方で白黒やグレイスケールの階調処理は健常者よりもむしろ洗練されているという報告もあり、必ずしも成績が劣るとは限らない。今後参加者を4名程度増やして、シーン再認課題についてデッサン熟達者と同様に健常者との比較を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はシーン再認に関する実験で、空間構造と色(輝度)情報の間に明確な相互作用が見られたことをふまえ、その脳内機序を探るためにfMRIによる計測を行ってきた。現在6割程度の画像を取得したが、使用している医学部のMRI装置の更新が急遽決まったため、1月から3月までの3ヶ月ほど実験を実施できない期間があった。結果としてfMRIデータの取得は1割程度計画よりも遅れているが、次年度で取得することは可能であり、その期間は心理学実験によるデータ取得を優先し、前倒しして進めたため、全体として大きな遅れはない。
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今後の研究の推進方策 |
26年度は、fMRI計測をさらに進めて残ったデータを取得する。この認知機能に関わる大脳皮質部位の活性領域が、1次視覚野や初期の色覚部位からV4, IT野を含む腹側系皮質の各部位へ向かう高次の色処理の流れの中に認められる可能性が高いため、その領域を中心に解析を進める。また引き続きデッサン熟達者と2色型色覚の方を参加者とした実験もさらに進め、健常者の機能との統計的な比較が可能なレベルまでのデータの取得をめざす。この能力差が生まれる脳内機序についても検討する予定である。
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